【十人十色の美衣食住・前編】元宝塚歌劇団宙組トップスター・凰稀かなめさんにインタビュー
01
凰稀さんが宝塚に入られたきっかけは何ですか?また、印象に残っている思い出を教えてください。
天海祐希さんの退団のときの映像をたまたま母親とテレビで見て、宝塚を知りました。それと同じ頃に父親もたまたま東宝の方と会う機会があって、同時期に両親から“宝塚”の話が持ち上がったんです。それで宝塚を観てみようということになって、初めて行きました。それから父親が宝塚音楽学校の受験スクールを紹介されたので見学に行ったんですが、その帰り道に「向いていないと思うから辞める」と母親に話し、父親にもそう伝えたら「せっかく紹介してもらったのにもったいない」といきなり怒られて(笑)。その頃は将来女優さんやモデルさんになりたいと思っていたので、ちょっと違うんだよな、と感じていたんです。ところが見学に行った翌日に学校で違うクラスの子に「昨日レッスンを見に来ていたよね。宝塚好きなの?」と声をかけられて。「別にそうでもないんだけど、両親に言われているんだ」と答えたら、「一緒にやろうよ」と誘ってくれて、それからお試しで通うようになったんです。そうやって通っているうちに先生から本格的に受験したほうがいいと言われて、それから365日朝から晩までレッスンに通いました。わけも分からず、とりあえず1回受験しようという感じだったので、絶対受かりたい!みたいな気負いもあまりなくて(笑)。ただ楽しく受験していたので、そういう所を宝塚の先生方が見てくれたんじゃないかと思っています。当時の試験はジャズダンス、バレエ、声楽。それから初見の8小節の譜面を渡されて、最初の音だけ出されて音階を歌っていくものもありました。
02
宝塚時代の舞台メイクは、ご自身でされていたのでしょうか?どなたかから手ほどきを受けるのでしょうか?
宝塚って、メイクはもちろん髪型も全て自分でやります。人にやってあげたり、やってもらうということはないんです。音楽学校の卒業公演の時に初めて“宝塚メイク”をするんですね。その時にはどの組で初舞台を踏むのかが決まっていて、初舞台を踏む組の先輩が学校に来てくれて、1日だけメイク講習をしてくれるんです。基本的に使う舞台用のメイク道具を一式用意してくれて、使う順番や彫が深く見えるラインの引き方など、メイクのポイントをひととおり教えてくださるんですが、それ1回だけ。それからは自分で研究あるのみで、下級生の頃はメイク道具を家に持ち帰って、毎晩のように練習していましたね。先輩から使っているアイテムを教えてもらったりしながら色物の種類や筆も増やして、どんどんメイク道具を変えていっていました。
03
舞台メイクで心掛けていることや変化はありますか?
心掛けていたのは、例えばイギリス人の役にはグリーン系、フランス人の役ならブルー系を入れてみたり、日本人の役だったら何もつけないとか、作品や役柄によってメイクを全部変えてました。以前に演じられた先輩のメイクをまねるというよりは、自分が考えるイメージに近づくよう練習していました。あとは、色を重ねてグラデーションにして立体的に見せたり、光の当たり方によって色味が変わって見えるように研究していて、アイシャドウは少なくても8~9色、多くて12色を使ってたんです。参考にしていたのは絵画。絵画って遠くから見るのと近くで見るのとで色が違うじゃないですか。美術館とかに行って色使いを見るのが、メイクの勉強になりましたね。
宝塚を卒業してからドーランは使っていないですね。ベースメイクは普段のメイクに使うファンデーションにしています。当時はドーランを塗って粉をはたいてから、さらにパンケーキという固形のファンデーションを重ねていたんです。なので肌荒れには悩まされていましたね。公演ごとにキレイな状態でお客さまに見ていただきたいと思っていたので、1公演終わったらその都度メイクを落としていたのもあって、余計に肌が荒れてしまっていました。
04
役によってメイクだけでなく香水も変えられていたと伺いましたが、それも役作りの一環として意識されていたんでしょうか?
国によってそれぞれイメージする“におい”って違うじゃないですか?それと同じで人それぞれの“におい”も違うし、記憶に残ったりするので、そういうことを取り入れたら面白いかもしれない、と思ったのがきっかけで香水を変え始めて、今でも継続しています。でもひとつの役に対して6個ぐらいの香水を使い分けていたので、香水の種類がとんでもない数になってしまって(笑)。それで作っちゃったら早いんじゃない?ということになって、香水を作り始めたところで、今は5種類に落ち着いています。本当は全部の役ごとに作りたかったんですが、そんな時間もなくて(笑)。5種類の香水をミックスさせたりして、香りの変化を楽しんでます。これまでの香水もファンの方々にご好評いただいているので、今後も演じる役に対してイメージがわいたら、また作りたいですね。個人的にはオレンジのような柑橘系の香りが好きで、宝塚時代から今も楽屋では柑橘系の香りのアロマをたいています。
05
宝塚時代から続けている肌のケア方法などありましたら教えてください。
実は宝塚時代には何にもやっていなくて、オールインワンのアイテムとかニベアやワセリンぐらいしか塗ってなかったんです(笑)。なので退団した時に社長に人前に出る女優としてちゃんとしてと注意をされまして、それからいただいたものを使うようになって、自身でも色々試すようになり、少しツヤ感とかは出てくるようになったかな、と思っています。普段はすっぴんで過ごしていることが多いですね。日焼け止めも自分では買わないんですが、いただいた日焼け止めがあって、髪、顔、体にも使えるものなので使ってます。
最近はちゃんとスキンケアをすることって大切だなと思うようになって、できる時はちゃんとシートマスクもして、特に朝はしっかりケアするようにしてます。ただ忙しい時は簡単なケアでいいかな、ってなってしまいますけどね。
06
コスメブランドのアンバサダーもされていますが、ご自分で作ってみたいコスメはありますか?
メイクをするのは好きなので、いろんな色が入っているアイシャドウパレットなんかいいですよね。万能にどんなメイクにも使える色味が入っていたり、組み合わせも自由にできるとか、自分で色を選べたりできるパレットがあったらいいなと思います。
〈凰稀かなめさんプロフィール〉
2000年、宝塚歌劇団に入団。2007年夏には世界陸上大阪大会開会式に合わせて結成されたユニット「AQUA5」のメンバーに。2011年に宙組へ組替えし、翌年にトップスターに就任する。2015年に宝塚歌劇団を退団し、舞台・ドラマ・映画と幅広く活動。2018年、舞台「さよなら、チャーリー」での演技が評価され、文化庁芸術祭賞の演劇部門新人賞を受賞。
後編では、凰稀さんのコンディションを整える方法についても伺いました。
編集/㈱メディアム 成田恵子、執筆/北村文、撮影/鈴川洋平
撮影協力/神谷町オープンテラス
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EDITOR
DEPACO編集部
副編集長 秀島
プロモーション歴10年以上、DEPACOの生みの親。ビューティ系企画~編集~広告~イベントまで幅広く携わる。経験とはうらはらに、百貨店入社をきっかけにデパコスに触れ始めた“保守派”でかつ、"自信はないけど少しはこだわりたい派"。趣味はアート&銭湯めぐり。
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“十人十色の美衣食住”
ひとそれぞれ、さまざまな「美」を大切にされている方々に迫ります。
今回のゲストは、宝塚歌劇団で宙組のトップを務め、退団後も舞台・ドラマ・映画と幅広く活動。2018年には舞台の演技が高く評価され「文化庁芸術祭賞」の演劇部門新人賞を受賞された凰稀かなめさんです。
■【十人十色の美衣食住・前編】元宝塚歌劇団宙組トップスター・凰稀かなめさんにインタビュー は7/27(水)公開予定→