新・BAさんとお客さん。【辛酸なめ子が行く!デパコスフロア探訪記】
頼りになる存在
今も美容のプロであるBAさんに相談するお客さんは多いようです。カラーメイクが充実しているブランドのMさんは、モードでクールなメイクで一見近寄りがたいですが、話してみると気さくなお方。
「リップのカラーバリエーションが豊富なので、若い方はリップから入ってくださったりします。メイクはじめてなんです、というお客様もいらっしゃいます。一緒にメイクしてブラシの使い方を教えてあげたりすると、変化を喜んでくださいます」
10代の女性で、母親同伴で来て「メイクははじめてなので教えてください」と言われたこともあったとか。お母さんにも、この人なら大丈夫と見込まれたのかもしれません。そのMさんが身に付けているウエストポーチを見て驚きました。数十種類のブラシが入っていて、画家のアトリエの画材かと思うほど。これだけ多種多様のブラシでカラーメイクの付け方を教わったら一生の財産になりそうです。
また、別のブランドのSさんも、「お客様にメイクをしていて、お悩みが解決して喜んでいる姿を見るとやりがいを感じます」と語っていました。お互い幸せになれるwin-winの関係が理想的です。個人的には、会食やパーティーの前に立ち寄ってポイントメイクしていただけたりしたらありがたいです。
BAさんとお客さんのディープな関係?!
カラーメイク系ではなく、スキンケア系ブランドのBAさんは、お客さんとさらにディープな関係を築いているようです。国内ブランドのBA、Fさんは、
「お客様と会話して盛り上がって、今日来て良かったわ、と言っていただけると充実感があります」とおっしゃいました。
「一方で最初フィーリングが合わなかったお客様が、セッションする中で心を開いてくださって、最後にはいい感じになってお礼を言われたりすると、とても嬉しいです」
Fさんの話術があれば、回を重ねるうちにたいていの人の心は開けてきそうです。ちなみに盛り上がる話題を伺うと、デパートという利点を生かし、
「大丸のおすすめスイーツの話題で盛り上がることも多いです」とのことでした。他フロアの販売促進にもつなげるテクニックが素晴らしいです。
また、カウンセリングを重視する国内ブランドでは、すっぴんになったりするので、さらにお客さんの心がオープンに……。
17年のBA歴を誇るTさんは、
「うちはカウンセリングに数十分、時間をかけるんです。素肌になって測定するので距離が縮まります。カウンセリングは濃密で、お肌だけでなく私生活の悩みを相談されることも……」とおっしゃいます。
「リピートしていただけると嬉しいです。新人の頃から十年以上、店を異動するたびについてきてくれるお客様もいましたね」
長身でショートカットでクールな佇まいのTさん。女子校にいたら女子の後輩にモテそうですが、ファンもついていたとは!
「20代だったお客様が結婚されてお子さんを連れてきてくださったり。お客様が大人になっていく過程を見守ってきました」
BAさんとの疑似友情
もしかしたら、その人が本当に幸せかどうかは、BAさんが肌を見れば一目瞭然なのかもしれません……。下手な占いよりも当たりそうな気がする肌測定。BAさんが思うポジティブな人、ネガティブな人の肌の違いを伺ってみました。
「ポジティブな方は、ツヤがあり、パッと華やかな印象。内面の充実や元気が表れているように感じます」
一方でネガティブ肌についてドキドキしながら聞いてみると、
「すぐ否定的になってしまう方は、肌もくすみがちな気がします。少し暗い肌の印象だったり…」とのことなので、くすみがちな身としては気をつけたいです。
「でもマイナスで来た方にちょっとでもプラスで帰ってもらいたい。カウンセリングの測定結果に否定的な感情を抱かれた場合、そのままで終わってほしくないので、そういう方をひと笑いさせたいなとか、元気になってほしいなって思っています。せっかく来ていただいたからには笑顔で帰ってもらいたいので、その方法を必死で探しています」
前述の他のブランドのBAさんもおっしゃっていましたが、皆さん、最初の雰囲気が微妙でも逆転させようと努力してくださるようです。友人でそこまで気配りしてくれる人はいないし、そんな人間関係、現実にはなかなかありません。
現実の人間関係に疲れたり悩んだりしたら、BAさんとの会話で心が癒されるかもしれません。遠くの友人より近くのBA……そんな思いでまたデパコスフロアに引き寄せられそうです。
EDITOR
漫画家・コラムニスト
辛酸なめ子
1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。 武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。 人間関係、恋愛からアイドル観察、皇室、スピリチュアルまで幅広く執筆。 近著に『辛酸なめ子、スピ旅に出る』(産業編集センター)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中公新書ラクレ)、『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。
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中学生のとき、はじめてデパートのコスメフロアで買い物した時のことをうっすら覚えています。何を買っていいのか右も左もわからず、不安で挙動不審だった私に、化粧水や乳液の使い方を教えてくれたBA(美容部員)のお姉さん。その優しさにほだされて、何年もそのブランドで購入していました。限られたおこづかいなので一本を少しずつ使ってなるべく長く持たせていましたが、今振り返ってみると、思春期にデパコスフロアのラグジュアリーなヴァイブスを吸収できたのは良い経験でした。洋服代はなくても、数千円のコスメを買うことで豊かな気持ちになれました。