新・デパコスと男性のお客様。【辛酸なめ子が行く!デパコスフロア探訪記】
今、メンズの美意識が高まっている
国内ブランドのTさんは「近隣企業の方は美意識が高いので、きれいめな方が多いです。男性も会社帰りにスキンケア商品を買われたり。最近は20代の男性でファンデーションやコンシーラーを使う方もいらっしゃいます」と教えてくれました。
一昔前、昭和の感覚でいうと男性はいっさい基礎化粧品の類いも使わず、自前の顔の皮脂だけで保湿しているイメージでした。しかも「男性の顔からはいい脂が出る」なんて都市伝説のような言い伝えもありましたが、それは過去のものになりつつあるのでしょうか。欧米でもメンズメイクが定着してきているそうで、日本もメイクジェンダーレスの流れに向かっているようです。
国内ブランドのKさんも「会社帰りに立ち寄られる男性のお客様も多いです。人気の美容液や、メンズラインの商品を買われる方もいらっしゃいます。清潔感がある方が多いですね。コロナ禍になって男性のお客様が増えた気がします」と、おっしゃいました。
以前、男性で美容クリニックに行く人が増えている、という現場を取材したことがあります。それまで自分の顔に無頓着だった男性が、オンライン会議でモニターごしに自分の顔をまじまじと見ることになり、自分の顔や肌をどうにかしたいという焦りにかられるそうです。たしかに鏡のようにキメ顔をキープするわけにはいかないし、補正といっても限りがあるし、顔の現実を見せつけられます。リモートワークが男性のコスメ購買につながっている、という面もありそうです。
スキンケアにとどまらず、アイドルやタイの俳優など、最近はカラーメイクをしているメンズも多く、目の保養になります。すっぴん男性とは違うフェーズの色香が感じられます。
カラーメイクのバリエーションが豊富な国内ブランドのBA、Tさんは「男性客も昔より増えてきています。先日も遠方からいらっしゃった20代男性がアイシャドウを買いたいです、と言ってこられました」とおっしゃいました。若い世代は美意識が高いです。検索すると、バレないメンズメイクについて解説しているサイトもあり、人にはわからないように、でもちょっとかっこよくなって差をつけたい、という男心が透けて見えるようです。
外資系ブランドの男性BA、Sさんにも話を伺いました。
「男性客の需要が高まっていて、デパコスフロアも男性客が増えましたね。希望があればメイクについてのアドバイスをすることもあります。20代の若い世代は韓流の影響が大きい。肌が白く目力があって、でも女性的にならない感じでかっこよくなりたい、という要望があるようです」
メンズメイクの最新トレンド
そんな美への野心を隠し持った男性に人気のメイクは……Sさんいわく、「インラインです。目頭切開ラインをさり気なく入れる人もいますね」とのこと。
インラインとは、女性にとっても上級者向けの、粘膜のキワに入れるライン。さらに目頭から鼻筋に入れて目を大きく見せる上級テク「目頭切開ライン」まで挑戦している男性がいるとは。女性としても負けていられないという気になってきます。
「ベースメイクから入って、アイシャドウ、アイライン、と進んでいく方も多いです。ホストの方もめちゃくちゃメイクがうまいですよ。二重のラインを入れたり。夜の世界はやって当たり前。売れたら整形したいけど、売れる前はメイクをがんばります」
売れているホストは自分の顔のチェックに余念がなく、フェイスラインをミリ単位で調整することもあると聞きます。ここまでくると女性としては完敗です。
一般の初心者男性はどんなメイクから始めるのでしょう?Kさんに伺うと……。
「眉毛をポイントにしている方が多いですね。おじさんになると眉毛をあきらめちゃう人もいますが……」とのことで、たしかに、そこが残念なポイントです。そして眉毛がやたら長いおじいさんに進化していくのでしょう……。
Kさんは、美容クリニックに駆け込む男性と同じ見解をおっしゃっていました。
「今年に入って男性のお客様が増えたのは、オンライン会議が大きいかもしれません。画面ごしに見られることで意識が高くなったようです。世間も男性のメイクを受け入れるようになりました」
画面ごしに見る同僚や仲間の男性がちょっとかっこよくなっていたら、もしかしたらコスメデビューしたのかもしれません。それを変に指摘したりせず、温かい目で応援していきたいです。いつか男女分け隔てなく、コスメトークで盛り上がれる日を願いつつ……。
EDITOR
漫画家・コラムニスト
辛酸なめ子
1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。 武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。 人間関係、恋愛からアイドル観察、皇室、スピリチュアルまで幅広く執筆。 近著に『辛酸なめ子、スピ旅に出る』(産業編集センター)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中公新書ラクレ)、『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。
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このところ美容意識が高い男性が増えていて、デパコスフロアでも男性客の姿が見られるようになりました。女性としては良い刺激になるというか、さらにコスメ業界が活性化しそうな期待感があります。実際のところはどうなのか、BA(美容部員)さんに話を伺いました。