

【前編】平野綾さん(俳優)にインタビュー!舞台・声優・歌手のそれぞれの活動で心がけていることとは?〈十人十色の美衣食住〉

01
舞台俳優を目指そうと思ったきっかけを教えてください。
子どもの頃、父の仕事の都合でニューヨークに住んでいた時期があって、本場のブロードウェーの舞台やショーを観たことがきっかけで、ステージに立ちたいと言っていたみたいなんです。
日本に帰国してからダンス、歌、ピアノを習い始め、ミュージカルやディズニーの映画ばかりを観ていました。その影響もあって、ミュージカルに挑戦したいと思い、住んでいた地域のミュージカルに出演したんです。
そのうちもっとステップアップしたくなって、小学5年生の時に児童劇団に入りたい、と自分から言って入団させてもらいました。
02
子役からキャリアをスタートされた当時に悩まれていたことはありましたか?
ミュージカルに出演したくて劇団に入ったのに、オーディションに落ちまくっていました。
その頃は子役ブームだったこともあり、競争率が高い時代だったんです。子役の多くは、私よりももっと幼い頃からレッスンを受けていましたし、才能がある子役たちが多すぎて、舞台の仕事に結びつくことは難しかったんです。
なのでドラマやバラエティ番組を中心に仕事をしていました。テレビはこれまでの自分にとってはなじみのない世界だったので、違和感がありながら仕事をしていたように思います。
一番悩んだのは、やりたい役は少し大人の役や感情の幅の広い役なのに、顔が童顔だから実年齢よりもはるかに幼い役しかこなかったこと。演じる役柄によって声まで変わってしまうことから、お芝居の先生から「顔と声を合わせてください。」とよく言われていました。
見た目の印象と声にギャップがありすぎると映像作品には向いていないようで、「あまりプラス要素にならない」と言われました。なので顔と声が合っていないことをコンプレックスに感じるようになりました。
03
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』に出演されてから声優の仕事が増えたと思います。どんなきっかけで声優に挑戦することになったんですか?
あるドラマに出演していた時に監督や周囲の方々から「声が個性的だから、声の仕事をやってみたら?」と言われたのがきっかけなんです。
私自身は自分の声があまり好きではなかったので、そう言われたことがとても意外でしたね。それで、初めて受けたアニメのオーディションに受かったのが14歳。アイドルのお仕事に区切りをつけて18歳の時にハルヒを演じ、みなさんに名前を知ってもらえるようになりました。
04
声優活動中、ドラマや舞台での演技との違いや難しいと感じたことはありましたか?
一生のうちに一度ぐらいはアニメの声をやってみたいなとは思っていましたが、声優という職業については何も知らない状態ではじめたので、現場に入ってから奥深さを知りました。
収録現場へ見学に行ったら、3本くらいしかないマイクの前に、まるでフォーメーションを組んでいるかのように声優さんが入れ代わり立ち代わり立って演じられていて、本当にびっくりしました。
誰も教えてくれる人はいなかったので、とりあえず先輩方の見よう見まねでやってみて、わからないルールは教えていただき、現場ですべて学びました。
当時は10代の声優がほとんどいなかったので、みなさんも珍しかったようで、とても優しくしていただきました。その頃にデビューした声優の同期は、今40代半ばから後半ぐらいの方たちが多いです。
これまでさまざまなジャンルに携わらせていただいた中で、声優界は一番ルールが多いと思います。収録の時の細かいルールがたくさんあるので、先輩方に聞いたり、現場見学をさせていただきながら一生懸命に勉強しました。
その頃の声優は今に比べて声優としてメディアに出ている方も少なく、裏方に徹している雰囲気で、巧みな技を披露する職人のような方が多い印象でした。
05
声優としての知名度が上がる中、舞台中心の活動に移行された理由を教えてください。
ありがたいことに声優として認知していただけるようになったことで、声優としてメディアに出るお仕事が増えました。でも舞台の夢はずっと捨ててはいなかったんです。
年齢を重ね、キャリアも積み、周囲の方たちからも認めていただけるようになってから舞台に戻りたいと思っていました。
当時の声優界は声優以外の仕事はやってはいけないような空気もありましたし、ファンの方々もバラエティ番組に出たりすると、声優を辞めてしまうのか…と誤解される状況が続いていたので、そのたびに「絶対に辞めない」ということを言い続けていたんです。
改めて、続けることって大事だなと思ったので、どのジャンルも辞めないで続けていこうと心に決めました。
そんな流れの中で舞台のお話をいただいたので、私としてはちょうどいいタイミングだと思って舞台に出演することにしました。
06
2016年にアメリカに短期留学しようと思われたきっかけは?
やっと舞台界にたどり着けたんですが、今度はよそ者扱いされてしまって。
声優として認知されていただけに、集客のためにキャスティングされたなんて言われたくなかったし、生半可な気持ちで舞台の世界に足を踏み入れたと思われないためにも納得してもらえる技術がないといけないと思いました。そこで、これまで学んできたことを一度リセットして、舞台のことを一から学ぼうと考え留学することにしました。
レギュラーの仕事はお休みさせていただいたり、降板した番組もあって、所属事務所からは「留学して帰ってきて、仕事がなくなったら自分の責任」と言われたんですが、「新しい技術を身につけて、新しい仕事を取ってくるので、大丈夫です」とお伝えして、なんのツテもないまま約半年間、留学しました。
今までの技術と新しい技術を比較してみたかったし、新しいことを学んで、今までできていたことがどう変わるのか気づきたかったんです。
基本的なベースは児童劇団時代にやっただけでしたし、仕事が忙しくてレッスンもなかなか行けなくて、アウトプットばかりで技術を向上させる時間がなくて。だから表現したくても体が追いついていかない状況が起きていて、それをなんとかしたいという思いが強かったですね。
アメリカで学んだ発声法は日本でも少し習っていたものだったので、それまでの知識も活かしながら点が線になるように学ぶことができました。学んでいるうちに今だけではなく、長く役者人生を送れることが大事だと考えるようになって、歌い方も変えました。
おかげで帰国してから、ミュージカルの現場でも「歌がとても変わった」と言っていただけるようになりました。自分だけでなく、周囲の方にも感じてもらうことができてうれしかったです。
それからは年に2回ぐらいアメリカに行って、レッスンを受けました。1回の滞在で2週間ぐらいの短期ずつでしたが、行くと行かないのでは全然違います。
日本で仕事をしていると自分では気をつけていても、いろいろな影響で知らないうちに元の状態に戻りかけてしまいます。
でもコロナ禍前まで定期的にレッスンを受け続けていたら自分でも直せるようになってきたので、続けることは大事だなと実感しています。コロナ禍以降はリモートでレッスンを受けられるようになり、参加しやすくなりました。
07
近年はライブ活動も精力的に行われているそうですが、舞台や声優の仕事と違う楽しさはどんな点ですか?
ベースが役者ですから、作品や役を通して表現することばかりしてきました。なのでライブでも歌詞のストーリーに出てくる女の子を演じながら歌っているところがあります。
私が作詞した歌は、よりパーソナルに近い部分もあるので、歌の世界観と自分のメッセージが半分ずつあるような感覚です。作詞していない時期もありましたが、ファンの方は私が書いた歌のほうがいいといってくださる方が圧倒的に多くて、なるべく自分で書かせてもらうようにしています。
曲ごとに歌声や発声法も変えて歌うことが多いのですが、声優時代の楽曲を歌う時は、あえて昔の歌い方に戻して歌っています。ある時期、私の歌声がミュージカルっぽくなってしまってイヤだと言われることが増えたんです。
それで歌い分けができるように研究を続けていたら、曲に合わせて使い分けられるようになりました。ポップス調の歌をミュージカル風に歌ってくださいというオーダーがよくあるんですが、逆に歌番組などでどちらも歌い分けることができるようになりました。
08
ミュージカルとポップスの歌い方の違いを教えてください。
声の使い方が違いますし、フレーズの取り方が違います。ポップスは場面展開が細かいし、ブレスで切っていいところが決まっていないんです。
でもミュージカルは言葉を伝えることが大事なので、フレーズを大きく取らないと歌詞が伝わらないことが多い。ミュージカルが苦手な方もいると思いますが、この違いが分かるとなるほどと思っていただけるんじゃないかと思います。
ミュージカルで歌い出すのは、エモーショナルに気持ちが動いた瞬間、セリフに音を乗せたほうが感情が伝わりやすいという相乗効果があるから歌うという感覚なんです。
『レ・ミゼラブル』のような作品の場合はセリフがなく、すべてが歌に込められているので、譜面がすべての感情を表しています。オリジナリティを出すのは悪いことではないけれど、作品のスタイルによって取り組み方が大きく変わるんです。
歌でありながらセリフとして喋っているかのように音や歌詞も計算し尽くされているので自然に自分の芝居も歌に合った感情になってくる。答えは譜面に書いてあるんです。
09
幅広いジャンルの活動で、それぞれに心がけていることがあったら教えてください。
私の場合は全部分けるようにしています。そのほうが自分自身も楽しいので。子どもの頃に顔と声が合わないと言われましたが、それを逆に強みにしてしまえばいいと思えるようになってから、思い切ってできるようになりました。
私が演じていると分からなかったと言われることがちょっとうれしいんですが、本当に気づいてもらえないことも結構あります。
たとえばベテランの声優さんは個性的な声の方が多く、この声といえばあのキャラクターというのがイコールだったりしますが、私は声のレパートリーが少ないほうなので、口調や演じている役のクセを作って演じ分けていくタイプです。おかげさまでクセのある役にお声がけいただく機会が多く、最近では舞台でも正統派の役というよりも個性的な変わった役を演じることが増えてきて、業界が異なっても求められる役割が同じになってきた感じがします。
後編では、平野さんの舞台メイクのこだわりや愛用アイテムついて伺いました。
<平野綾さんプロフィール>
1998年に児童劇団に入団し、ドラマやCMに出演。2006年、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の声優でブレイクを果たし、歌手としてもソロデビュー。2011年から舞台を中心に活動し、『レ・ミゼラブル』『レディ・ベス』『モーツァルト!』など大作に出演。2024年からは歌手活動も本格的に再始動。舞台・声優・歌手として幅広く活躍している。
編集/㈱メディアム 成田 恵子、執筆/北村 文、撮影/三浦 藤一
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EDITOR

DEPACO編集部
エディター 高梨
旅行誌の出版社で編集職を10年以上経験。出産を機にキャリアを見つめ直し、今後は大好きな美容の情報発信をしたいという想いでDEPACO編集部へ。美容はスキンケアやベースメイクでの“土台作り”が好き。趣味は旅と料理。
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“十人十色の美衣食住”
ひとそれぞれ、さまざまな「美」を大切にされている方々に迫ります。
今回のゲストは、子役から活動をスタートし、ドラマやCMに出演後、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の声優でブレイクを果たし、歌手としてもソロデビュー。2011年からは舞台を中心に活動し、『レ・ミゼラブル』『レディ・ベス』『モーツァルト!』など大作に出演するほか、2024年からは歌手活動も本格的に再始動。舞台・声優・歌手として幅広く活躍している平野綾さんにお話を伺いました。