【デパコスの未来】デパコスの魅力って何?コスメのサステナやSDGsは進んでいるの? WWDJAPAN×DEPACO 編集長対談〈前編〉
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):新型コロナウイルスの発生から2年経ちましたが、改めて今、大丸・松坂屋のコスメフロアはどんな状況ですか?率直に今、どんなことを考えていますか?
望月美穂「DEPACO」編集長(以下、望月):この2年間は百貨店、その中のコスメフロアについて、本当に色々考えました。カウンセリングやタッチアップ、テスターの利用など当たり前だった接客が制限され、海外からのお客様が途絶え、売りあげは大打撃を受けました。海外のお客様の売りあげは、今でもほぼ消滅しています。日本のお客様の売りあげも、2020年は前年の4割減でした。「当たり前」だった接客の価値を再認識しています。
コスメフロアは信頼できるブランドの集合体。ブランドの"本気”が伝わる場所
村上:改めてコスメフロアやデパコスの魅力をどうアピールしたいとお考えですか?
望月:日本人のお客様による売りあげはコロナ禍前に戻ってきています(21年12月現在)。やはり「お客様は香りやテクスチャーを確認したり、ビューティアドバイザー(以下、BA)に相談したりしながらお買い物されたいんだな」と実感する日々です。今は、これまでの活動をできるところから再開しています。でも、それだけではコロナ禍前には戻れません。そこで大丸・松坂屋はBAの価値がさらに増して、店舗の内外で活躍いただける環境を整えようとしています。これまで店頭で「待つ」ことしかできなかった仕組みを変えようとしているんです。村上さんは、百貨店のコスメフロアやデパコスの意義をどう捉えていらっしゃいますか?
村上:もちろん新興ブランドもありますが、百貨店のコスメフロアには圧倒的な経験と知見を有する名門ブランドが勢ぞろいしていますよね。ここは、信頼できるブランドの集合体だと思っています。私たちの仕事もプリントからデジタル、動画、セミナー&イベントと進化していますが、いずれも根底には、ずっと業界を見続けているからこその知識と経験、だから抱ける意志があります。百貨店のコスメフロアも同じじゃないかな?って思うんです。だから売場がデジタルになっても、きっと大丈夫です(笑)。
望月:「DEPACO」の企画で先日、外資系の化粧品ブランドで働いた経験をお持ちの美容コメンテーターの三上大進さんにお会いしたのですが、三上さんは、「百貨店のコスメフロアは、人とモノに私が出合う場所。『敷居が高い』と感じるのは本気で良いものを届けたいという百貨店とブランドのプライドを感じ取るからでは」と言ってくださり、とっても嬉しく思いました。
機能と感性双方を併せ持つデパコス。これからは「個性」を引き出す時代
村上:やっぱり望月さんも、百貨店のコスメフロアやデパコスって楽しいと思いますか?
望月:そもそもビューティ業界は奥深くてものすごく楽しいですよ!本気で人を美しくしたいと思っている方々に支えられている幸せ産業で、右脳と左脳、機能と感性の双方を持ち合わせています。そしてデパコスは、日用品であり消耗品でありながらもブランド品で嗜好品。そこには、まだまだ大きな可能性があると思うんです。
村上:「最近面白い」「素敵だな」と思っているブランドは?
望月:“振り切っている”ブランドは、すごく面白いと思っています。機能と感性のバランスの良いブランドが多い中、異彩を放っていますね。例えば〈ポーラ〉の「B.A」や「ホワイトショット」「リンクルショット」には、「どこまで進化するんだろう?」「化粧品で、どこまでやれてしまうんだろう?」って思うほど突き詰めるサイエンスがあります。一方で〈ポール&ジョー〉の2021年ホリデーコフレの“猫リップ”は、猫がサンタの帽子をかぶっていて塗りにくそうだけれど、そんなの関係ありません(笑)。ファンなら絶対に買ってしまう、感情に働きかける魅力を持っています。〈アディクション〉も、クリエイティブディレクターがKANAKOさんになったときのデビューコレクションのカラフルなアイシャドウは、気持ち良いくらい振り切ってましたよね?最新の22年春カラーコレクションも雨の情景をテーマにした色合いが独特ですし。
村上:僕は最近〈カネボウ〉の提案に共感しています。「今シーズンは、この色です」という、ブランドからの一方的な発信が多かったビューティ業界の中で「あなたの個性を引き出します」という姿勢に変わり、発信しようとしている意欲を感じています。例えばアイブロウペンシルは、「あなたの陰影を強調し、輪郭を表現することで個性を引き出します」って語りかけてくれるんです。一方的な発信の時代の終焉を感じています。
望月:最近の〈カネボウ〉からは、ジェンダーレスのムードも感じますね。
”メンズコスメ”というくくりって本当に必要??
村上:ジェンダーレスの提案には、可能性を感じていますか?
望月:売りあげは伸びていますが、「今の男性にとって何が正解なのか?」は正直まだわかりません。ある調査によると、今の若い男性の過半数は、女性向けの化粧品を使っているそうです。だから「そもそも『メンズコスメ』というくくり方自体が時代に合わないのかな?」なんて思うこともあります。メンズとウィメンズの垣根がなくなり、コスメフロアにいろんなお客様が座っているのが本来の姿なのかな?って思うんです。
村上:ほんの数年前までは「贈り物ですか?」と聞かれることも、カウンターに座るのも、僕でさえ恥ずかしかったけれど、そんな居心地の悪さは感じなくなってきました。若い世代には最初に「メンズ」と「ウィメンズ」の2択を迫られ、「メンズ」を選ぶと絶対に「ウィメンズ」の商品には出合えない構造のファッションECサイトを物足りなく思う人もいるようです。その2択を選択しなくても進められるECサイトがあってもいいのに、って思います。その意味で言うと百貨店のコスメフロアには、フラフラして未知と出合える良さがありますよね。
望月:BAさんは今も圧倒的に女性が多いですが、半分くらいが男性になるとコスメフロアの景色が変わるのかもしれません。
村上:ちゃんとすることの心地よさや、自己表現におけるメイクを志向する男性は、増える一方だと思います。
望月:キレイになることに無関係な人はいませんよね。洗髪や髭剃りもキレイにすることで、心地よくなること。人々の豊かな生活に欠かせない要素としていつか衣食住に「美」も加えた「美衣食住」な世の中になることを望んでいます。
ビューティ業界でも求められる本格的な廃棄問題への取り組み
村上:もう一つの大きな社会課題、サステナブルについてはどうでしょう?
望月:デパコスの世界では、SDGsやサステナブルに取り組んでいないブランドのほうが珍しいでしょう。弊社でもコスメのプラスチック空き容器を回収してショッピングチケットと交換する「コスメdeエコフ」の取り組みなどをしておりますが、それぞれのブランドがフェアトレードやトレーサビリティ、自然エネルギーの導入、簡易パッケージやボトルのリサイクルなどに取り組んでいます。「人を美しくする」業界は、クリーンで健全であるべきです。ビューティ業界とSDGsの理念は、相性が良いと思います。あらゆる産業の中でリードする存在になってほしいですね。カーボンフットプリントを基準に商品を選ぶ、そんな日はそれほど遠くはないでしょう。
村上:ファッションの世界では、半年おきに様変わりするコレクションを不思議に思う人も増えています。
望月:ビューティの世界でも、シーズンごとに変わるコレクションやパッケージの刷新によって発生する廃棄は根深い問題です。セールやアウトレットが少しずつ始まっていますが、百貨店のラグジュアリーコスメはブランド価値を重んじ値引きを避ける傾向があるのでまだまだ本格的ではありません。メルカリなどの二次流通市場におけるコスメ・美容カテゴリーの流通規模が年間400億円に達するなどのニュースを聞くと、正直、お客様の方が一歩も二歩も先を行っているなと思います。これだけ大きな市場になったということは、それだけニーズがあるということ。特に高価格帯のラグジュアリー化粧品には「失敗したくない」「買う前にある程度しっかり試したい」というニーズがあります。化粧品は衛生商品なので難しいとは思いますが、何か取り組めることはないか?と注目しています。
後編では村上編集長と望月がリアルもデジタルも楽しいビューティの世界ってどんな世界?について語ります。
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EDITOR
DEPACO編集部
編集長 望月
新聞記者やビューティ業界紙の編集記者を経て、大丸・松坂屋に入社。化粧品各社の戦略やビジネスなど、ビューティ業界を見つめて早10数年。年齢に伴う肌悩みに向き合いつつ、無理をしない「ながら美容」を追求する編集部最年長。愛犬の散歩で1日平均1万歩の健脚が自慢。
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大丸・松坂屋が手がけるデパコスのオウンドメディア「DEPACO」は2022年春、EC機能も持つメディアコマースとしてリニューアル。そこで「DEPACO」の編集長・望月が、ファッション&ビューティのニュースメディア「WWDJAPAN」の村上要編集長と、百貨店ビューティやデパコスの未来を語り合います。前編は、改めて百貨店のコスメフロアやデパコスの魅力、そしてサステナブルやダイバーシティのお話をお届けします。