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【デパコスの未来・後編】女性社長が語る、ビューティ業界の女性参画&多様性推進への想い「WWDJAPAN」&「DEPACO」の編集長鼎談〈ポーラ〉編

DEPACO編集部
編集長 望月
2022/05/24

大丸・松坂屋による「DEPACO」は2022年3月、デパコスの“メディアコマース”としてリニューアルしました。特集「#デパコスの未来」では、「DEPACO」の編集長・望月が、ファッション&ビューティのニュースメディア「WWDJAPAN」の村上要編集長と、毎回ゲストを招いて百貨店ビューティやデパコスの未来を語り合います。



今回は「B.A」や「リンクルショット」「ホワイトショット」などを手掛ける〈ポーラ〉の及川美紀社長とのお話。後編は、及川社長が推進する女性参画や多様性の推進について伺いました。

01
〈ポーラ〉には元来、「一人一人を見る哲学」

WWDJAPANの村上要編集長
「WWDJAPAN」の村上要編集長

村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):今回はビューティ業界における女性参画についてお話を伺います。〈ポーラ〉では多くの女性が美容部員として、スタッフとして働いていますが、女性のキャリア形成について、及川社長の考えや〈ポーラ〉の哲学、導入したシステムなど、教えてください。

〈ポーラ〉の及川美紀社長
〈ポーラ〉の及川美紀社長

及川美紀〈ポーラ〉社長(以下、及川)〈ポーラ〉には元来、「一人一人を見る」哲学があります。そもそもジェンダーを超越していて、「〇〇さんは、こうだよね」「××さんのここが素晴らしいよね」というムードがあるんです。輝くはずの個人の資質を阻害している要因って、本人以外にあるんですよね。一人一人は環境やインプット、周囲との関係性次第で必ず輝く、ダイヤの原石だと思っています。

例えば以前訪問販売が主流だったときに採用されたビューティーディレクターの多くは、美容の技術を知らない、業界に携わったこともない、販売だって初めての方がほとんどでした。主婦も多く、「1日2時間なら働けます」という方も多いんです。でも美容や商品知識、お客様とのコミュニケーション方法を教えると、皆さんどんどん成長します。最初の資質だけで判断すれば採用されないかもしれない人たちが、ショップや大きな組織のオーナーになることもあるんです。

02
女性を「解放して、リミッターを外してあげられたら」

DEPACO編集長・望月美穂
「DEPACO」編集長・望月美穂

望月美穂「DEPACO」編集長(以下、望月):一人ひとりの可能性を信じる土壌があるんですね。

及川:ただ女性の場合は、ライフステージによって家事や育児の負担が大きくなってしまうこともある。それを解消したいと思っています。

村上:実際可能性がぐんぐん伸びて活躍されてきた方を目の当たりにしているから、その可能性の阻害要因を取り除きたいんですね。

及川:女性をいろんなものから解放して、リミッターを外してあげられたら、元来の能力を発揮できると思うんです。美しさや可能性を阻害しているものを考えると、やっぱりジェンダーギャップが先進国の中で最下位という現実と向き合うことになります。仕事と家事を合算すると、日本の女性の労働時間って世界一なんです。そういう人たちを一番抱えている化粧品業界は、女性の環境や能力開発にもっともっと目を向けないと。

村上:そんな想いは常日頃、お客様にも伝えているんですか?

及川:そうですね。「〈ポーラ〉はジェンダー平等を真剣に考えています」と発信すると、反応してくださるお客様は多いです。私自身、就職活動では「40代以上の女性が働いているかどうか?」を1つの判断基準としていました。

03
ビューティーディレクターの第1号誕生秘話とは?

京都で誕生した、第一号ビューティーディレクター(写真中央)
京都で誕生した、第一号ビューティーディレクター(写真中央)

及川:〈ポーラ〉には、40代以上の働く女性が圧倒的に多かったんです。歴史を紐解くと戦前、1937年の話ですが、京都の事業所がセールスマン募集の張り紙を出したことがあったそうです。すると着物姿の女性が「女やったら、あきまへんか?」と応募してくれて、ビューティーディレクターの第一号になりました。美容も販売も未経験の女性が応募してくれたとき、「やってみなはれ」と言った男性たちがいたのも、すごいなと思っています。追い返すこともできたのに「面白いじゃないか」「やる気があるんだったら、やってみなさい」って言う男性たちがいたのも、当社の歴史なんです。

村上:望月さんの職場にも、女性の美容部員さんがたくさんいらっしゃいます。

望月:現場はむしろ女性で成り立っているぐらいです。お客様も圧倒的に女性が多く、販売員さんも女性が多い。女性がいつまでも、現役で、第一線で活躍できる環境は、われわれの業界にとってすごく重要です。

04
百貨店ビジネスチームが発足した「ペンギン会」って?

及川:日本は長年、労働力としての女性には期待していたけれど、意思決定者としては期待されていませんでした。当社の次なる課題は、「意思決定の中にどれだけ女性を入れることができるか?」です。すでに部門長の3割、経営層の4割は女性ですが、今後も意識し続けたいと思います。百貨店の売場にもチーフというリーダーがいますよね。女性も多いチーフの声をどれだけ吸い上げ、彼女たちの考えを施策にしていくか?が問われると思います。百貨店ビジネスの組織は昨年、「ペンギン会」を作ったんです。売場からファーストペンギン(ベンチャー精神を持って行動する個人や企業を、尊敬を込めて呼ぶ言葉)を輩出することを目標に掲げ、業務改善や施策に関する提案をいっぱい集め、意思決定に参画するチーフの育成を目指しています。

望月:面白いですね。私も最初「ペンギン会って、なんだろう?」と思いました。

及川:前編でもお話しましたが、「私なんて……」っていう人を減らしたいんです。企画は本社、現場は販売ではなく、融合していく橋渡しのシステムが絶対に必要です。やっぱり売場は最先端ですから。

05
「百貨店の化粧品売り場は夢の国」

村上:最後に及川社長が百貨店に望むことがあれば教えてください。

及川売場は本当にいろんな可能性を秘めているので、オンもオフも新しいことに挑戦したいですね。イベントって、楽しいじゃないですか。「わざわざ来る場所」としての夢が広がり、それをオンラインで告知するともっと広がる。そんな融合を楽しみにしています。

望月:「DEPACO」もそこを目指しているんです。オンラインの利便性は欠かせないけれど、ビューティは、それだけで完結する世界ではありません。やっぱりわれわれの強みはリアルの店舗で、日々お客様と接する販売員の皆さま。お客様にはリアルのワクワク感や特別な体験価値を提供し続けていきたいと思います。

及川:百貨店の化粧品売場は夢の国。キラキラしたものがいっぱいあるじゃないですか。すてきな笑顔がいっぱいある宝石箱みたいなところに、どうやって新しい輝きを加えられるか?を考えていきましょう。

EDITOR

DEPACO編集部

編集長 望月

セールスマン募集の張り紙を見てやって来た女性が「ビューティーディレクター」の第一号だったという話は驚きでした!昔からダイバーシティやジェンダーレスの土壌が〈ポーラ〉には根付いていたこと、とても興味深かったです。
肌悩み
  • 黄ぐすみ/たるみ毛穴
好きなメイク
  • アイシャドウと眉色をリンクさせた統一感あるアイメイク
コスメの悩み
  • 新しいメイクに挑戦しづらい

新聞記者やビューティ業界紙の編集記者を経て、大丸・松坂屋に入社。化粧品各社の戦略やビジネスなど、ビューティ業界を見つめて早10数年。年齢に伴う肌悩みに向き合いつつ、無理をしない「ながら美容」を追求する編集部最年長。愛犬の散歩で1日平均1万歩の健脚が自慢。

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