【デパコスの未来・後編】コスメブランドを超えた!?〈SHIRO〉の挑戦に迫る 「WWDJAPAN」&「DEPACO」の編集長鼎談〈SHIRO〉編
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):今回は、〈SHIRO〉が目指すサステナブルな社会、中でも「みんなのすながわプロジェクト」について伺います。
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「みんなのすながわプロジェクト」とは?
福永敬弘・SHIRO社長(以下、福永):「みんなのすながわプロジェクト」は、企業が自分たちブランドが生まれた都市に投資するだけじゃなく、「どうやったら、その町がより良くなるのか?」を市民と一緒に考えながらつくり上げる「共創」のアクションです。もちろん〈SHIRO〉は、「清水の舞台から飛び降りる」ぐらいの覚悟で投資していますが、市民と一緒につくり上げたいんです。
望月美穂「DEPACO」編集長(以下、望月):地元住民への説明会も積極的ですよね?
福永:昨年の6月にキックオフして以降、ワークショップも含めるとすでに10回以上、コミュニケーションを図っています。
村上:北海道の砂川市にお住まいの方と対話しているんですね。
福永:もともと砂川生まれで、今は他の町にいる方にも参加いただいています。
02
SDGsやアップサイクルは意識してない?
福永:最初は、正直なかったんです。今回も新工場の建設に関しては、北海道の砂川がいいのか、やっぱり首都圏の方がいいのか?リスクも含めて考えました。でも砂川には、北海道には、本当にすてきな植物などの素材があるんです。
望月:SDGsの一つのトピックスとして、ローカリティが叫ばれていますよね。でも〈SHIRO〉って本当にずっと前から、結果的にローカルでしたよね?北海道で採れるがごめ昆布は、ブランドの創立当時から使っていらっしゃいますが、SDGsを意識していた訳ではないんですか。
福永:単純に北海道で採れる昆布の、捨てられていた部分に魅力的な成分があったんです。きっと今なら「アップサイクル」って言いますよね?
望月:前編のジェンダーレスの話もそうですが、結果的に「時代が追いついてきた」のかもしれませんね。
福永:単純に、正直にやってきただけですけれどね。
村上:とはいえ結果、豊かな自然を守るアクションにつながり、環境に負荷をかけないブランドとして前進し、最近はパッケージの簡略化などサステナブルな取り組みが進化しています。外箱の撤廃については、ショップやスタッフ、取引先、何よりお客様の反応はどうでしたか?
03
外箱の撤廃は「まだちょっと早かった」?
福永:2022年の4月1日、化粧箱を全て廃止しました。実は数年前から箱がない商品を選んでいただいた際は3%値引きする「エシカル割」という取り組みを続けてきたんです。とある製品では8割が「エシカル割」というくらい定着したので、今回全アイテムに拡大しました。業界的では「勇み足」と言われましたけれど。
望月:本当ですか。
福永:はい。今まで化粧箱を作っていただいた会社にはおわびしながら進めましたが、それでも「まだちょっと早いんじゃないの?」などのお言葉をいただきました。でも〈SHIRO〉は、人間中心から地球中心の考え方に移行しなくちゃって思っているんです。同じタイミングで、お買い物袋も有料にさせていただきました。街には〈SHIRO〉の紙袋を持っている人がいっぱいいて、無料の広告塔として魅力を伝播してくださっているので迷いましたが、その発想も人間中心、自分たち中心ですよね?地球のことを考えたら、「やっぱり無駄な紙って要らなくない?」だったんです。われわれの規模が実践してもたかがしれていますが、地球中心の考え方に移行すべく踏み出しました。
望月:すごいです。先駆者だなって思います。ショッパーを有料にするブランドは増えていますが、外箱の廃止まで舵を切れるのは、「さすが〈SHIRO〉」と思います。福永さんは「百貨店にはご迷惑をおかけしました」とおっしゃいましたが、現場はお客様への説明や手順をしっかり練習をして臨んだので、クレームなどはないと聞いています。予想以上にお客様のパッケージレスへの理解は進んでいましたね。
福永:そうなんですよね。若い世代を中心に皆さん、地球環境には危機感を抱いています。
望月:そう、若い方ほど。
福永:我々世代よりも、「当たり前じゃん」みたいな感覚ですよね。「遅いくらいだよ」っていうのが本音かもしれません。だからスタッフからの反対はありませんでした。逆に「こういう無駄もやめませんか?」と提案してもらったくらいです。
04
化粧品の外箱がないのは、私たちにも良いことかも?
望月:外箱って、結局捨てるじゃないですか。
村上:愛用品なら、最初に1回もらえば十分ですよね、正直。
望月:結局捨てる物をわざわざもらって、家に帰って分別するなら、自分にとっても、もらわないほうが優しいかもしれません。
村上:確かに。捨てるとき、少し後ろめたい気持ちになっちゃいますよね。
望月:結果的には人間にも良いことだと思うんです。こういった取り組みを先駆者として進めてくださり、他のブランドにも広がって当たり前になったらと思います。
福永:化粧箱に助けられていたのは、物流だったんです。だから「物流の梱包に気を使えば、外箱はいらないよね」と思えるようになりました。こうした発見がみんなのナレッジになれば、対応した緩衝材が生まれるかもしれません。
望月:ノウハウを〈SHIRO〉が業界に広めてほしいですね。
05
もう化粧品会社を超えている!?
村上:ところで「みんなのすながわプロジェクト」は今後、どうなるんですか?
福永:過疎化が進んでいる町なので、例えば交通は大きな問題です。不便だと、市民は市外で買い物してしまいます。そこで、町を巡る循環バスを民間だけの力で走らせることができないか?と考えています。ホテルのような宿泊施設も構想しています。いい意味で人が動いて、滞留する町にしたいと思います。市民の皆さんは時々、例えば有名なハンバーガーチェーンのように、「今、ないもの」を望みます。でも、それでは町の独自性が生まれません。「じゃあ、こんなものはどうだろう?」と相談し、一緒に、化学変化を起こしながら作るんです。ここが妙だと思います。
望月:自分たちがずっと住んできた町の良さって、案外気付けないものですよね?第三者が入ってきて、あらためて町の魅力が掘り起こせたらいいですね。でも、もう化粧品会社がやることを、超えてますね(笑)。
村上:砂川がもっと魅力的になったら、こんな町で生まれた〈SHIRO〉ってすてきだよねというブランディングにも繋がりますね。
望月:循環してくるわけですね。
福永:雇用が生まれるなどの副産物にも期待はしています。
村上:最後に福永さんから、百貨店や「DEPACO」に望むことはありますか?
福永:「DEPACO」には、メディアであってほしいと思います。いろんな気付きという、ECサイトとは違うメディアの魅力を発信してほしいです。「DEPACO」でいろいろと気付き、世界が広がっていけばと思います。
望月:福永さんに言っていただいたとおりの存在を目指しています。お客様と、すてきなデパコスとの出合いの懸け橋になるための情報をと思っているので、すごくうれしいです。
EDITOR
DEPACO編集部
編集長 望月
新聞記者やビューティ業界紙の編集記者を経て、大丸・松坂屋に入社。化粧品各社の戦略やビジネスなど、ビューティ業界を見つめて早10数年。年齢に伴う肌悩みに向き合いつつ、無理をしない「ながら美容」を追求する編集部最年長。愛犬の散歩で1日平均1万歩の健脚が自慢。
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大丸・松坂屋によるデパコスの“メディアコマース”「DEPACO」の特集「#デパコスの未来」では、「DEPACO」の編集長・望月が、ファッション&ビューティのニュースメディア「WWDJAPAN」の村上要編集長と、毎回ゲストを招いて百貨店ビューティやデパコスの未来を語り合います。
今回のゲストは、コスメティックブランドの〈SHIRO〉を手掛ける、福永敬弘社長。後編は、今全力で取り組んでいる「みんなのすながわプロジェクト」など、サステナブルの話です。