

【デパコスの未来・前編】多様な人のライフスタイルに寄り添う〈SHIRO〉の魅力を考えてみた 「WWDJAPAN」&「DEPACO」の編集長鼎談〈SHIRO〉編

福永敬弘・SHIRO社長(以下、福永):「#デパコスの未来」にお招きいただけること、とっても楽しみにしていました(笑)。
望月美穂「DEPACO」編集長(以下、望月):ありがとうございます。私、だいぶ前からラブコールを送っていましたからね(笑)!改めて〈SHIRO〉のご紹介をお願いします。
福永:〈SHIRO〉はコスメティックブランドとして、フレグランスやスキンケア、メイクアップ製品を国内27店舗のほか、イギリスや台湾、アメリカで販売しています。
01
メディア出身の社長にとっての〈SHIRO〉の魅力
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):そんなブランドの福永社長は、私たちのようにメディア業界出身なんですよね?
福永:そうですね、17年以上メディアの会社にいました。
村上:なぜ、ビューティ業界に飛び込んだんですか?
望月:福永社長と初めてお会いしたときは、「異端児だな~」って思いました(笑)。

村上:未知の業界だけど飛び込みたいぐらい、〈SHIRO〉が魅力的だったのでしょうか?

福永:ビューティ業界に転身した2014年当時、〈SHIRO〉はまだ前身の〈ローレル〉というブランドで、正直誰も知らないような状況でしたが、魅力的でした。人の魅力、がありましたね。僕自身が「何をやるか」よりも「誰とやるか」を大事にしていた時期で、社長だった今井(=今井浩恵・現代表取締役会長兼ファウンダー・ブランドプロデューサー)やスタッフがとても魅力的だったんです。
望月:魅力的な仲間と一緒に、ブランドを大きくする夢があったんですね。

福永:前職のメディアでは転職や結婚など人生の一大事、ライフイベントに向き合っていました。一方の化粧品は、転職や結婚ほどの一大決心をしなくても、簡単にスイッチを入れることができたり、前向きになったりします。そして転職や結婚、車の購入は人生で数回だけれど、ビューティには何度も向き合える。スイッチングコスト(現在利用している製品やサービスから、別の製品やサービスに乗り換える際に負担する金銭的、心理的、手間などのコスト)も低いから、ビジネスとしてのチャンスも限りないと思ったんです。
村上:ビューティ業界に飛び込んで、改めて感じた〈SHIRO〉の魅力は、なんでしたか?
福永:「正直さ」でしたね。素材に向き合い、純粋に自分たちが良いと思うもの、使いたいと思えるものだけを正直に作り続けています。人や地球、社会に対しても誠実に正しくいたいと思っていて、本当に正直なブランドなんです。
02
多様なライフスタイルブランドに進化した秘密
村上:男性ユーザーも惹きつける多様性や、フレグランスなどの品揃えも幅広いライフスタイルブランドである、というところも〈SHIRO〉の魅力や個性だと思っているのですが、こんな魅力・個性は、どう確立されたんですか?

福永:「自分たち目線」が具現化されているブランドだと思っています。例えばフレグランスは今も、日本では「おすし屋さんに行くときはチョット……」なんて遠慮してしまいますが、〈SHIRO〉のフレグランスは、“そこはかとなく”自然に香る。それは、私たちが本当に作りたかったものなんです。それで男性も含め、いろんなお客様の生活に根付いてきたんだと思います。
03
〈SHIRO〉をコスメフロアに導入した大丸各店の変化
望月:大丸・松坂屋では心斎橋店や京都店でお世話になっていますが、店頭でも本当に男性のお客様が多いんです。今は、4割くらいでしょうか?
村上:そんなに?
福永:お買いあげベースでは2割弱ですが、入店はそのくらいですね。
望月:カップルのお客様も多いし、女性が男性へのギフトを選ぶケースもあります。実際、ユーザーの4割くらいは、本当に男性かもしれません。
福永:うれしいですね。
村上:そうなるとフロアの雰囲気も変わりますね。
望月:そうなんです。〈SHIRO〉のお店だけちょっと違うんです(笑)。
福永:百貨店だと、特にそうでしょうね。
望月:本当に化粧品フロアに新しい風を吹かせてくださっています。
村上:とはいえ、最近はジェンダーレスやライフスタイルを標榜するブランドが増えています。こうした傾向は必然なのでしょうか?
福永:アパレルより表現しやすいかもしれませんね。サイズがないし、色も自由。ビューティ業界のほうが、先に進みやすいと思います。
望月:そもそも〈SHIRO〉は、当初からジェンダーレスを掲げていたんですか?
福永:掲げるつもりはありませんでしたが、性別による差をつけようとは全く思いませんでした。
望月:その姿勢が受け入れられて、結果、男性のお客様が増えているんだと思います。
福永:そうですよね。いずれ「メンズ館」って死語になるかもしれませんね(笑)。
望月:村上さんとも、そんな話をしましたね(笑)!化粧品でも、「メンズ売場」や「メンズライン」は無くなっていくのかも。
村上:だんだん不思議に聞こえるようにはなっていますね(笑)。

望月:「本当に必要なのかしら?」っていう思いは、私にもあるんです。正解はまだ分からないけれど、〈SHIRO〉を見ていると、男性と女性が同じフロアで一緒に買い物を楽しめるのが本来の姿なのかな?って思います。
福永:いろんなブランドからいろんな製品が出て、分け隔てがなくなると良いですね。
村上:ファッションでも、オーバーサイズのコートやちっちゃいバッグは、男性と女性がシェアしています。ところで今、カテゴリーごとの売りあげの割合はどんな感じなんですか?
福永:3年ぐらい変わっていません。フレグランスが55%ぐらい、次いでスキンケア、メイクアップですね。
04
フレグランスの人気の理由を聞いてみた
村上:フレグランスの人気の理由は、どう分析しているんですか?
望月:業界の皆さん、知りたがるんですよ。よく聞かれるんです、「なんで〈SHIRO〉のフレグランスって、あんなに強いの?」って。
福永:明確な答えは、僕らにも分からないんです。僕は、“そこはかとなく”香るのが、日本人にぴったりなんだと思っています。
村上:でも、自分はしっかり香りを楽しめるから満足感が高いですよね。
福永:持ち歩いて気軽に楽しめる良さもあります。
望月:フレグランス以外の香りにまつわる商品も多いですよね。ルームフレグランスなどは、取り入れやすいんだと思います。
村上:コロナで「おうち時間」が長かったから、業界全体でルームフレグランスが売れました。〈SHIRO〉でも同じようなことは起こりましたか?
福永:はい。加えて我々はコロナが発生して約1カ月の2020年4月には手指用アルコールスプレーを販売しました。その後も、廃番にしていたアロマオイルを復活させるなど、自社工場があるから他社よりフレキシブルに対応できたと思います。

村上:手指用のアルコールスプレーは、どこよりも早かったですね。
望月:機動力がありますよね。
福永:いち早く、当時企画していた新商品のリップも「やめよう!」って言いましたから。
村上:なるほど。そんな速さも、売り場に新しい風を吹かせている秘密かもしれません。
05
社長も初めて知った百貨店とのビジネスの不思議
望月:逆に〈SHIRO〉みたいな新しいブランドには、百貨店ってどう映っていますか?
福永:ワンフロアにあれだけのブランドが集まっているのは、お客様にとってすごく魅力だと思います。そんな売場を魅力的に感じるお客様に選ばれたいという思いもあります。不思議なのは、取引形態ですね。僕、この業界に来て初めて知ったんです、消化仕入れっていう形態。
村上:店頭にある商品が売れた時点で初めて、ブランドと百貨店の間の取引が成立するとみなすシステムですね。一般的には、お客様に売れる前の商品は、百貨店にとって仕入れる前の状態です。百貨店は在庫のリスクを持ちません。
福永:あれは、モノも売れている時代は良かったんでしょうが、「いつまで続けられるのかな?」と思っています。ただ、〈SHIRO〉はデパコスでもありたいと思っています。というより、「どう称するか?」は皆さまに決めていただければ。
望月:なるほど。たくさんのブランドが一つのフロアに存在する百貨店という、歴史はもちろん、お客様の信頼が存在する空間に価値を見出していただけるのであれば、すごく嬉しいです。
福永:徹底した品質管理や正確な広告表現など、百貨店に入って学んだこともいっぱいあるんです。お取引のおかげで筋肉質になっていますから感謝しています。
後編では〈SHIRO〉の新たなチャレンジ「みんなのすながわプロジェクト」など、サステナブルな取り組みのお話をお届けします。
EDITOR

DEPACO編集部
編集長 望月
新聞記者やビューティ業界紙の編集記者を経て、大丸・松坂屋に入社。化粧品各社の戦略やビジネスなど、ビューティ業界を見つめて早10数年。年齢に伴う肌悩みに向き合いつつ、無理をしない「ながら美容」を追求する編集部最年長。愛犬の散歩で1日平均1万歩の健脚が自慢。
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大丸・松坂屋によるデパコスの“メディアコマース”「DEPACO」の特集「#デパコスの未来」では、「DEPACO」の編集長・望月が、ファッション&ビューティのニュースメディア「WWDJAPAN」の村上要編集長と、毎回ゲストを招いて百貨店ビューティやデパコスの未来を語り合います。
今回のゲストは、コスメティックブランドの〈SHIRO〉を手掛ける、福永敬弘社長。前編では、いち早くライフスタイルブランドに成長した〈SHIRO〉の軌跡を伺いました。