【デパコスの未来・後編】「希望」を語る製品って、一体なぁに?「WWDJAPAN 」&「DEPACO」の編集長鼎談〈KANEBO〉編
01
プロダクトコンセプト「Unlock Your Energy」
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):前編でお伝えした通り、〈KANEBO〉は「希望」を語るブランドに進化しようとしていますが、製品にはどんな特徴があるんでしょう?
山口聡一・花王化粧品事業部門〈KANEBO〉ブランドグループ長(以下、山口):製品の中身自体にもパーパスを抱きかかえさせるため、ブランドコンセプトの下にプロダクトコンセプト「Unlock Your Energy」を掲げています。「個々のエネルギーの最大化」といった意味合いですが、固定概念を打ち破ろうというメッセージも込めています。スキンケアに関しましては、もちろん機能はしっかりと、さらにその先にある「希望」のメッセージと共に届けるベネフィットを設計段階から考えています。
村上:「使い続けると、こんな人生が待っているかもしれない」まで考えているんですね。
望月美穂「DEPACO」編集長(以下、望月):最初に出てきた商品からブランドの思いが反映され、個性的だなと感じています。
村上:具体的には、例えばどんな製品ですか?
02
大事にしてきた生体模倣技術を搭載
山口:まず〈KANEBO〉スキンケアの象徴である朝クリーム「クリーム イン デイ」は、当社が長年開発に取り組んでいる、生体がもつ機能や構造、成分に着目した「生体模倣技術」を盛り込んでいます。例えば洋服に引っ付くオナモミの実からは、今や洋服に欠かせない面ファスナーが生まれています。ドローンの誕生には、ハチドリの飛行機能が生かされていますよね。
「クリーム イン デイ」は赤ちゃんの未熟な肌を守る「胎脂(たいし)」という物質の機能を模倣して開発したクリーム処方を採用しているんです。「胎脂」とは羊水中から乾燥した大気中へと、生存環境が大きく変化する新生児の未熟な肌を守るクリーム状の物質です。人類が初めて出会うスキンケアなのではないかと思います。
「クリーム イン デイ」を使うと、保湿力が上がり、メイクも崩れにくくなります。水分と油分のバランスが整ってメイクが崩れにくくなることで、日中アクティブになれたり、ひいてはモチベーションさえも変わったりするのではないか?と考えています。これが、「その先のベネフィット」です。
村上:なるほど。前向きに過ごせるようにという思いを込めているんですね。
山口:月曜日の朝も、楽しく起きられると思います。
村上:メーキャップはどうですか?
03
カラーコスメは個々人の“パーツ美”を際立てる商品設計
山口:これまでは、憧れの、均等な美しさのモデルを通して、「このメイクを、一緒にやってみませんか?」とアプローチしていたと思います。一方今の〈KANEBO〉は、個々人の“パーツ美”を際立てる商品設計です。一人ひとりの個性を好きになっていただき、その表現を通して新しい発見をしてもらうことで固定概念を覆していこうと考えています。秋に発売した「ティントリップコート」は、ぷるんとした“うるみ質感”と、自分色に変化する色あいが美しいティントタイプのリップコートで、色が落ちにくく、キレイな発色が続く製品です。青色は、塗ると唇の上の水分が足されて少しピンクになるんです。私、今これを塗っているんです。しゃべり過ぎて、ちょっと落ちましたけれど(笑)。
望月:私も今日、オレンジを塗ってまいりました(笑)。
山口:見る角度によって若干色が変わったり、その人の個性をより際立てて表現力を高めます。
望月:唇の上に色をのせるというよりは、もともと自分が持っている唇の色素を生かして自然に発色するイメージですね。
村上:新生〈KANEBO〉の化粧品って、「この色です」って一方的に押し付けるのではなく、陰影を強調するとか、パーツ美を際立たせるというように、元来持っている人の個性や魅力をより引き出してみませんか?強調してみませんか?というアプローチですよね。
望月:一つの美の基準を押し付けたり、そこに押し込めたりするのではなく、もともと自分の持っているものを生かしましょう、もっともっと魅力的に見せましょうという思いを込めているんですね。
山口:唇でも眉でも目でも、「嫌いなところをどうにかしたい」「憧れる人のようになりたい」という思いはあると思いますが、それ以前に自分の魅力に気付いていない方が大勢います。だからまずは、「そこって、大事なチャームポイントだよ」ってところを、カウンセリングでいろんな角度からお客様と一緒に発見しながら、化粧品を試していただく。そんな、お客様の魅力を引き立てることに徹した製品機能をそれぞれに盛り込むことに命を懸けています。
04
コンセプトやパーパス(※)、フィロソフィーは発信し続ける
※ビジネスシーンでは「何のためにこの会社やブランドがあるのか」という、企業の最も根本的な存在意義や究極的な目的、全体の指針などを指す
村上:望月編集長、実際店頭でも「お客さんが変わってきたな」とか「ブランドの存在感が高まっているな」という感覚がありますか?
望月:リブランディング以降は、話題になる製品がSNS上でバズったり、有名なタレントやモデルの愛用アイテムとして紹介されたり、結果若い方が増えたように思います。また美容部員さんは制服まで変わって、フレッシュな風も吹いています。一方、商品と店頭、コミュニケーションが三位一体となって初めてお客様に伝わるという意味で、百貨店の店頭には昔のデザインやかつての什器が残っています。ここには、まだまだ改善の余地がありますね。
山口:おっしゃる通り商品だけでも駄目で、売場やデジタルの世界もパーパスドリブンしていきます。例えば売場は「BIRTH OF HOPE」、「希望」が生まれる場所と名付けています。売場デザインや機能、接客の仕方まで、「希望」が生まれる瞬間を見出す設計を心掛けています。ただ、売場はまだまだこれから。ブラッシュアップできることがたくさんあると思っています。
望月:コンセプトとかパーパス、フィロソフィーって、独りよがりになっちゃいけないと思うんです。今のお客さまは日々お忙しいから、こちらが期待するほど気にしていないというか、あんまり気付いていないかもしれません。でも、そこは本当に手を止めてはいけない。ずっと愚直にやり続けることが必要だと思います。まだ2年だから、これからですね。
村上:手を止めず、いろんなところで発信し続ける。
山口:とてつもなく重要ですね。
村上:最後に山口さんが「DEPACO」に望むこと、百貨店に望むことがあれば教えてください。
山口:「DEPACO」さんとは、一緒にデパコス業界を刺激し、盛り上げ、楽しくしたいと思います。特にいい意味で「敷居を低くする」ことが大事だと思っていますので、タッグを組めたらと思っています。
望月:「敷居を低くする」は、私もやりたいことの一つです。「DEPACO」のターゲットは、「デパコスに興味があるけれど、何を選んでいいのか分からない」「情報がたくさんあり過ぎて、何を信じるべきか分からない」といったデパコス初心者さんや迷子さん。そういった方たちにデパコスの世界を楽しんでいただけたらと思いますので、一緒によろしくお願いします。
山口:オンラインでも人の温かみを感じるメディアコマースって、すごく素敵だと思うんです。もう一個、最後にお願いがあって。
望月:ドキドキしますね(笑)。
山口:望月編集長の愛用コスメのコーナーに、〈KANEBO〉を1品入れていただきたいなって思います。
望月:前向きに検討させていただきます(笑)。
EDITOR
DEPACO編集部
編集長 望月
新聞記者やビューティ業界紙の編集記者を経て、大丸・松坂屋に入社。化粧品各社の戦略やビジネスなど、ビューティ業界を見つめて早10数年。年齢に伴う肌悩みに向き合いつつ、無理をしない「ながら美容」を追求する編集部最年長。愛犬の散歩で1日平均1万歩の健脚が自慢。
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大丸・松坂屋が手がけるデパコスのメディアコマース「DEPACO」の編集長・望月が、ファッション&ビューティのニュースメディア「WWDJAPAN」の村上要編集長と、ゲストを招いて百貨店ビューティやデパコスの未来を語り合います。今回は、〈KANEBO〉の山口聡一・花王化粧品事業部門「KANEBO」ブランドグループ長にお話を伺いました。後編は、「I HOPE.」という思いから生まれる〈カネボウ〉の製品に迫ります。