新・デパコスの選び方。【辛酸なめ子が行く!デパコスフロア探訪記】
インフルエンサーに学ぶメイク術
外資系ブランドのBA(美容部員)であるTさんは「今は雑誌よりもSNSを参考にする方が多い印象です。多くの方がYouTuberやインスタグラマーが紹介したものを気になさっていらっしゃいます」とおっしゃいました。
インスタで「デパコス」と検索すると、コスメ好きの方があらゆるブランドの新作をわかりやすく並べたりしています。ていねいにメイクの順番を解説している投稿もあり、「アイシャドウ→マスカラ→アイライン」という順番とか、今見ても勉強になります。他にも、ブルベ用の涙袋コスメとか、お得すぎるキットの紹介、絶対買いの神下地など、コスメ情報が満載です。なかには、BAさんのようにアイシャドウなどを手首に塗って発色を確かめる動画も。
皆さん基本的に自腹でたくさんのアイテムを買って試しているのでしょうか。SNSにはコスメ好きの方の親切心が渦巻いていました。あまりネガティブな情報が出てこないのにもコスメ愛を感じます。
別の外資系ブランドのYさんも、「お客様から教えていただくこともあります。一緒に動画を見せていただいて、動画のメイク法を試してみたり。私たちが使わない方法でメイクしていたりするので新鮮です」とおっしゃっていました。
「眉に使うものを目の下に影を入れるのに使っている方もいました」とのことで、そのブランドのアイブロウペンシルを拝見すると、絶妙な色合いのカラーバリエーションで、たしかに眉以外にも使えそうです。有名なYouTuberの方が取り上げると、急に売れ出したりするとか。ちなみに、眉用を目の下に使ってもとくに問題はないとのことです。
「若い世代の方は皆さん研究熱心ですね」という言葉に触発されました。大人世代として、メイクの固定観念に囚われていた気がします。
マスク生活でのトレンド
また、昨今のコロナ禍でのマスク生活もメイクに大きな影響を与えています。
「はじめの頃は、口紅をつけなくてもいいという人も多かったけれど、最近はマスクを外す機会が増えて口紅も売れています。口紅みたいな色付きリップで、ティントタイプの色が残るものが人気ですね」と、外資系ブランドのSさん。
マスクの内側は肌が荒れがちで、着脱を繰り返すことによって温度や湿度が変化するのも肌に良くないそうです。意外と乾燥してしまうので、リップケアタイプの商品の需要が高まるのもよくわかります。また、リップをつけていないとマスクを外した時に、まず自分のテンションが下がる、というデメリットがあるので、志気を高めるためにも口紅はマストかもしれません。
外資系ブランドのTさんは「マスクでも合うメイクについて聞かれたり、アイブロウに悩んでいる方も多いです」と、教えてくださいました。
やはり見える部分の、アイブロウとアイシャドウのメイクを重視している方が増加傾向に。マスクで顔の下半身が隠れるぶん、眉をしっかり描くことで結構若く見えるので、大人世代にとってはやりがいがあります。個人的にもコロナになってから眉マスカラを取り入れて、ピンクグレーの眉で若返った気になっています。
デパコスフロアは情報の宝庫
国内ブランドのFさんに話を伺うと、「今はカウンセリングをお店で受けてから、ネットで買う方も多いですね」と話していました。いったん時間を置いて、ネットの評判などもチェックして慎重に選ぶのでしょうか。若い世代は情報収集がポイントのようです。かつてネットがなかった時代は雑誌に掲載されていたおすすめアイテムを、もしかしたらタイアップや宣伝かもしれないのに、そのまま信じて購入していましたが……。
今は情報量も選択肢も増えたので、調べるのが大変です。もしかしたら基本にたちかえって、BAさんに直接おすすめを聞くのが良いのかもしれません。先日も、コスメショップで店員さんにネイルの塗り方を教わり、ただ単色で塗っていたのが、同系色の複数の色をランダムに塗り重ねるというアーティスティックなテクを伝授いただきました。やはりネットごしでは得られない、生のアドバイスを聞くと心が満たされます。
YouTuberやインスタの動画をきっかけにデパートの化粧品売場に足を運ぶ若い人が多いのは、それだけ人とのコミュニケーションを求めている、ということに……。コスメ動画に不勉強なので、もしそんなお客さんとBAさんの会話に遭遇したら、横で聞いて参考にしたいところです。視覚だけでなく聴覚からでも情報収集できるデパコスフロア。メイクや人生に行き詰まりを感じたらアップデートのためにも訪れたいです。
EDITOR
漫画家・コラムニスト
辛酸なめ子
1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。 武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。 人間関係、恋愛からアイドル観察、皇室、スピリチュアルまで幅広く執筆。 近著に『辛酸なめ子、スピ旅に出る』(産業編集センター)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中公新書ラクレ)、『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。
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ちょっと前まで、コスメを買いにいく時に参考にしていたのは、やはり雑誌がメインでした。紙媒体で育った身としては、雑誌のシーズンごとの新作コスメ特集をチェックして、時には切り抜いて持ち歩いたりもしていますが、もしかしたら今の若い世代はそんなアナログなことはしないのかもしれません。