【デパコスの未来・後編】金山社長が考えるファッション×ビューティーの可能性とは?「WWDJAPAN」&「DEPACO」の編集長鼎談〈ジバンシイ〉編
01
金山社長が愛用する〈ジバンシイ〉のアイテム
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):金山社長が個人的にお好きな〈ジバンシイ〉のアイテムは何ですか?
金山桃 LVMHフレグランスブランズ代表取締役社長(以下、金山):たくさんの製品を使っていますが、持ち歩いているのは「スキン PFCT コンパクト クリーム」です。化粧直ししやすいクリームで、薄づきで化粧崩れを整えてくれます。〈ジバンシイ〉は香水から始まったブランドなので、このクリームもふんわり優しい香りがして、お直ししてからマスクをつけると癒されます。他には「プリズム・リーブル」も好きですね。4色構成のパウダーでワントーンにならないところが気に入っています。「プリズム・リーブル・スキンケアリング・コレクター」、「プリズム・リーブル・スキンケアリング・コンシーラー」も愛用しています。
村上:「プリズム・リーブル・スキンケアリング・コレクター」、とってもよかったです!
金山:チップの平面が広く塗りやすく、テクスチャーもなめらかでポイント使いもしやすいんです。この上に「プリズム・リーブル」をプラスするだけのベースメイクもおすすめです。
望月美穂「DEPACO」編集長(以下、望月):元々「プリズム・リーブル」というヒット商品がありますが、このコントロールカラーとコンシーラーを見たとき、「〈ジバンシイ〉がベースメイクにさらに本気を出してきた!」と感じました。
村上:今っぽいアイテムですよね。若い世代はコンシーラーをファンデーションの代わりに使っています。そんな使い方にもちょうどいいですね。
金山:若い世代向けには製品紹介だけでなく、〈ジバンシイ〉らしい独自のサービスを考えています。近年男性にも肌荒れや見た目にも気を配る方が増えているので、性別問わず幅広い皆さんにカウンターでメイクアップレッスンなど特別な体験を提供したいです。
望月:〈ジバンシイ〉の商品は、元からジェンダーレスなアイテムが多いですよね。パッケージもスタイリッシュで、男性が持っていても違和感ないものばかり。
02
新クリエイティブディレクターはドラッグストアのコスメも使う?
村上:(2022年1月に就任した)トム・ウォーカー=ジバンシイ メイクアップ クリエイティブ ディレクターはどうですか?
望月:20年以上もブランドを率いた前任のニコラ・ドゥジェンヌの存在感が強かったですよね。そこから新しいクリエイティブクリエイターに代わり、時代が変わるんだと感じました。
金山:〈ジバンシイ〉はニューチャプターに入ろうとしています。トムはイギリス人で、パーソナリティもビジョンも今までとは全く異なるという意味で、以前とは比較できません。2022年12月に初来日したトムとは初対面でしたが、まるで以前から知っていたような親近感を覚えました。実はロンドンに住んでいた頃の住まいの近くに彼が住んでいて、共通点が多いことがわかりました。彼のスタイルは押し付けるのではなく、引き出すタイプ。メイクでも人の個性を尊重して、絶対ダメ出しをしません。モデルさんの個性を際立たせながら美しく仕上げるという姿勢は、ブランドのフィロソフィーとマッチしています。
村上:その人の魅力を引き出すために何ができるか、というスタンスを感じますよね。テクノロジーを使った自然由来のアイテムだからこそ、厚塗りにならないようなアイテムが揃っていて、個性を存分に引き出したいというビジョンが伝わってきました。
金山:イギリスはCSRの先進国ですが、彼も生来、ダイバーシティ&インクルージョンの持ち主であるところにも共感します。また、好奇心旺盛で色々なコスメを試しています。日本でもドラッグストアやバラエティストアでショッピングを楽しんでいましたよ。消費者も今はラグジュアリーとマスブランドをうまくミックスして使う方が増えているので、その感覚がわかる人だと思います。
03
「履歴書」から「メタバース」まで革新的な取り組み
望月:昨年は採用活動では履歴書への性別や婚姻状況、生年月日の記載、写真の添付義務を廃止したというニュースがありましたね。
金山:LVMHグループのビューティーブランドで初めての取り組みとして、2022年9月にスタートしました。お客様がビューティー コンサルタント(BC)に求めていらっしゃるのは外見や年齢ではなく、接客スキルや人柄、雰囲気だと思います。そこで人柄、雰囲気においては、これらの情報は求めないという方針に至りました。この新たな取り組みは就任した当初から実現したかったことの一つです。お店だけでなく、本社も同じ採用方法です。
望月:採用プロセスではどういう部分をご覧になるんですか?
金山:お店やポジションによって求めるものが異なるため、経験と需要のマッチングを重視しています。もちろん接客スキルを知るためには面接も大切です。履歴書では年齢の記載や写真の添付を必須事項としないことで、応募者の個性や意志を尊重するスタンスです。
望月:なるほど、面白いですね。〈ジバンシイ〉は他にも興味深い活動をいっぱいされていていますよね。2020年にはゲーム「あつまれ どうぶつの森」にビューティールックを提供して、21年にはNFTアートの制作、22年はメタバース領域でオンラインプラットフォーム「ロブロックス」に進出。どういった流れでデジタルの取り組みを行っているんですか?
金山:アクセシビリティという観点からフランス本国が取り組んでいます。もっと多くの方、若い方にもブランドを体験してもらいたいという狙いです。
望月:デジタルを使って接点を増やすというとSNSのイメージが強いですが、メタバースというところが思い切っています。
金山:ローマン・スピッツァー(パルファム ジバンシイ最高経営責任者)がブランドのマインドセットを実現するためにデジタルに取り組んでいます。
望月:手応えはありますか?
金山:ニュースとして紹介していただくなど一定のインパクトは得られていますが、これはグローバルの取り組み。私としては、もっとローカルで何かを仕掛けたい。何ができるのか……?と日々アンテナを張っています。
04
ファッションとビューティーの融合が起爆剤に
望月:〈ジバンシイ〉はクチュールという確固たる背景があるビューティーブランドで、さらに大きくなる可能性を秘めていると思います。金山社長は今後、どうブランドを成長させていきたいと考えていますか?
金山:ビジョンとしてはフランスの3大ブランドの一つになりたいと考えています。まずはチームを再建してきましたが、マーケティングや戦略もシフトして、ここからというところですね。製品面では既に2024~25年のプロジェクトが始まっていますが、日本のニーズも反映して、長期的に取り組んでいこうとしています。コミュニケーションではファッションが一つの起爆剤になると思います。ジバンシィ ジャパン プレジデントの佐藤考輔さんとは、ブランドの強みや相乗効果を発揮する計画を練っています。
望月:ファッションとビューティーの好循環が生まれると、一気に勢いが加速しますね!
村上:変わっていく片鱗は見えていますよね。22年はマシュー(・M・ウィリアムズ)ジバンシィ クリエイティブ ディレクターにインスパイアされたフレグランス「ド ジバンシイ MMW オーデパルファム」が発売されて、「スプリング コレクション 2023」もマシューが採用したモノグラム柄でした。
望月:ファッションとの融合、ブランドのフィロソフィーを入れ込んだ新しい商品が出てくるんですね。
金山:そうですね。加えて製品パッケージに使用される材料の重さや余分なスペースを削減したり、レフィル交換が可能なパッケージを開発したり、今の時代に合ったサステナビリティを考えた製品作りをしています。
望月:〈ジバンシイ〉は革新的な商品が印象的でした。これまでも球体ブラシのマスカラ「フェノメン・アイズ」や、pH値で色が変わるリップなど、毎回新しく遊び心のある商品にワクワクしてきました。今後の商品も楽しみにしています。
EDITOR
DEPACO編集部
編集長 望月
新聞記者やビューティ業界紙の編集記者を経て、大丸・松坂屋に入社。化粧品各社の戦略やビジネスなど、ビューティ業界を見つめて早10数年。年齢に伴う肌悩みに向き合いつつ、無理をしない「ながら美容」を追求する編集部最年長。愛犬の散歩で1日平均1万歩の健脚が自慢。
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大丸・松坂屋によるデパコスの“メディアコマース”「DEPACO」の特集「#デパコスの未来」では、「DEPACO」の編集長・望月が、ファッション&ビューティーのニュースメディア「WWDJAPAN」の村上要編集長と、毎回ゲストを招いて百貨店ビューティーやデパコスの未来を語り合います。今回のゲストは、〈ジバンシイ〉などを展開するLVMHフレグランスブランズの金山桃・代表取締役社長。後編では、金山社長の愛用アイテムを紹介していただいた後、常に革新的に進化してきたブランドの今と未来について聞きました。