【デパコスの未来・前編】〈YSL〉が取り組む本気のサステナビリティとは?「WWDJAPAN」&「DEPACO」の編集長鼎談〈イヴ・サンローラン〉編
DEPACO編集部
編集長 望月
2023/05/19
大丸・松坂屋によるデパコスの“メディアコマース”「DEPACO」の特集「#デパコスの未来」では、「DEPACO」の編集長・望月が、ファッション&ビューティーのニュースメディア「WWDJAPAN」の村上要編集長と、毎回ゲストを招いて百貨店ビューティーやデパコスの未来を語り合います。今回のゲストは、〈イヴ・サンローラン〉の長谷友紀子事業部長。前編は、コロナ禍からマスク制限が緩和されたこれまでの動向と、サステナビリティや社会貢献活動の取り組みについて伺いました。
01
コロナ禍でフレグランス、スキンケアに注力
望月美穂「DEPACO」編集長(以下、望月):長谷さんが現職に着任された2020年5月はコロナ禍真っ只中でしたが、当時はどういった状況でしたか?
長谷友紀子 イヴ・サンローラン・ボーテ事業部長(以下、長谷):〈イヴ・サンローラン(以下、YSL)〉をメイクアップに強いクチュールブランドとして成長させ続けることをミッションに着任したのですが、20年4月頃からは緊急事態宣言で店舗が休業。外出自粛やマスク着用の影響で、当時50%近い売り上げを占めていたリップに注力できず、売り上げも3~4割減と非常に困難な状況でした。ただ、その前からの課題に落ち着いて取り組める時間でもありました。
望月:どのような課題ですか?
長谷:ベースメイクやスキンケアに注力しきれていなかったので、改めて本腰を入れました。また〈YSL〉は、世界的にはフレグランスの売り上げが大きいブランド。日本ではまだ小規模だったので、この機会に注力しようと切り替えました。
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):当時は「リップと言えば〈YSL〉の「ルージュ ヴォリュプテ シャイン」というくらい一世を風靡したので、新型コロナの流行は大打撃だったと思います。徐々にマスク制限が緩和されていますが、最近はいかがですか?
長谷:2023年2~3月にはリップの新色を発売し、売り上げを伸ばしています。また3月24日から、ジャパンメイクアップミューズとしてTWICEのSANAさんを起用させていただき、「ルージュ ヴォリュプテ キャンディグレーズ」の新CMにも出演いただきました。起用から3月末までにブランド自体の売り上げは+20%以上、リップは+60%と大きく成長しています。
長谷友紀子 イヴ・サンローラン・ボーテ事業部長(以下、長谷):〈イヴ・サンローラン(以下、YSL)〉をメイクアップに強いクチュールブランドとして成長させ続けることをミッションに着任したのですが、20年4月頃からは緊急事態宣言で店舗が休業。外出自粛やマスク着用の影響で、当時50%近い売り上げを占めていたリップに注力できず、売り上げも3~4割減と非常に困難な状況でした。ただ、その前からの課題に落ち着いて取り組める時間でもありました。
長谷:ベースメイクやスキンケアに注力しきれていなかったので、改めて本腰を入れました。また〈YSL〉は、世界的にはフレグランスの売り上げが大きいブランド。日本ではまだ小規模だったので、この機会に注力しようと切り替えました。
02
マスクを外したお客様の悩みとは?
望月:店頭でのお客様のニーズ、ご要望に変化はありましたか?
長谷:2月頃からマスク着用緩和のニュースが出始めたことで、リップの色を選びたいというお客様が増えました。改めてマスクを外してリップを塗る際、メイクのバランスを再考する方が多かったんだと思います。もう一度リップの選び方やカラーコスメの使い方を教えて欲しいという声があります。
望月:マスク生活では目元のメイクに注力していましたから、そのままリップも塗ってしまうと、メイクが濃くなることもありそうですね。店頭での接客が復活し、美容部員さんはいかがですか?
長谷:コロナ禍はいつ感染が収束するかも分からず、お客様も自分も感染しないようにと気を配り、美容部員にとっては精神的にも大変な時期でした。ただその間はスキンケアやフレグランスのカウンセリングスキルを高めようとオンラインでのリモートトレーニングを行いました。今は3年ぶりに本格的なタッチアップをさせていただくタイミング。メイクスキルの再構築に注力しています。
村上:他のブランドなどでは、コロナ禍で美容部員になられた方の中には、お客様の顔に直接触れたことがない方もいると聞きます。
長谷:おっしゃる通りで、大きな課題です。ただメイクアップが好きで〈YSL〉の美容部員になっている者が多いので、タッチアップの復活は非常に喜んでいます。
長谷:2月頃からマスク着用緩和のニュースが出始めたことで、リップの色を選びたいというお客様が増えました。改めてマスクを外してリップを塗る際、メイクのバランスを再考する方が多かったんだと思います。もう一度リップの選び方やカラーコスメの使い方を教えて欲しいという声があります。
望月:マスク生活では目元のメイクに注力していましたから、そのままリップも塗ってしまうと、メイクが濃くなることもありそうですね。店頭での接客が復活し、美容部員さんはいかがですか?
長谷:コロナ禍はいつ感染が収束するかも分からず、お客様も自分も感染しないようにと気を配り、美容部員にとっては精神的にも大変な時期でした。ただその間はスキンケアやフレグランスのカウンセリングスキルを高めようとオンラインでのリモートトレーニングを行いました。今は3年ぶりに本格的なタッチアップをさせていただくタイミング。メイクスキルの再構築に注力しています。
村上:他のブランドなどでは、コロナ禍で美容部員になられた方の中には、お客様の顔に直接触れたことがない方もいると聞きます。
03
ヒット商品とプレミアムラインでスキンケアが成長
村上:スキンケアはどのように強化していますか?
長谷:2022年9月にプレミアムラインの「オールージュ」の一部製品をリニューアルして、今非常に伸びています。また〈YSL〉にはフェイシャリストがいるんですが、コロナ禍ではフェイシャルトリートメントを提供できませんでした。4月から徐々に百貨店のキャビンをお借りして再開していて、フランスの本社から招いたトレーナーによるトレーニングを経て、「オールージュ」の新しいフェイシャルもスタートしました。落ち着いて接客できる環境作りとして、「ピュアショット ナイトセラム」のローンチ時からはスキンケア用のエリアも設けています。
望月:スキンケアのヒット商品「ピュアショット」は、モロッコの「YSL ウリカ コミュニティ ガーデン」で栽培した植物由来の成分を使用していますよね。
長谷:〈YSL〉のサステナビリティには3つの柱があり、その一つがモロッコのウリカ渓谷に設立したボタニカルガーデン「YSL ウリカ コミュニティ ガーデン」です。このガーデンでは環境負荷の少ない栽培方法で植物原料を作りながら、地域の女性の自立支援を行っています。2025年までに〈YSL〉の全ての新製品にこのガーデンで栽培した植物由来成分を入れるという目標があり、既にスキンケアはもちろん「ルージュ ヴォリュプテ」シリーズをはじめとするリップ製品ほか「オールアワーズ リキッド」「アンクル ド ポー ルクッションN」などのベースメイクや「リブレ」のフレグランスやボディーケア商品などにも使用しています。
望月:スキンケアのヒット商品「ピュアショット」は、モロッコの「YSL ウリカ コミュニティ ガーデン」で栽培した植物由来の成分を使用していますよね。
04
環境保護、社会活動など広がる〈YSL〉のSDGs
望月:最初聞いたときは「YSL」と「植物原料」のイメージが結びつかなくてビックリしましたが、とても本格的な取り組みなんですね。
長谷:限りある資源を大切にする取り組みとしてリフィル製品を徐々に増やしています。他にもテラサイクルと協業し、全ての製品において使用後のパッケージはリサイクルできるようになっていたり、ショッピングバッグがご不要の場合は“ノー ショッピングバッグ”ポイントを付与していたりと、さまざまな形でサステナビリティに取り組んでいます。
村上:こうしたサステナブルな取り組みは若い世代の方に響いていますか?
長谷:若い世代は強く意識されていると感じます。またSDGsの一つですが、社会貢献活動「ABUSE IS NOT LOVE」に取り組んでいます。非営利団体のパートナーによるインティメイト パートナーバイオレンス(親密なパートナーからの暴力、IPV)防止プログラムを支援しており、22年度は約1万4000人の方にパートナー団体とともに啓発活動を行いました。今年は2万人を目標にしています。
後編では、長谷事業部長の愛用アイテムを紹介していただいた後、若者や男性など広がるお客様とのコミュニケーションについて語っていただきました。
長谷:若い世代は強く意識されていると感じます。またSDGsの一つですが、社会貢献活動「ABUSE IS NOT LOVE」に取り組んでいます。非営利団体のパートナーによるインティメイト パートナーバイオレンス(親密なパートナーからの暴力、IPV)防止プログラムを支援しており、22年度は約1万4000人の方にパートナー団体とともに啓発活動を行いました。今年は2万人を目標にしています。
後編では、長谷事業部長の愛用アイテムを紹介していただいた後、若者や男性など広がるお客様とのコミュニケーションについて語っていただきました。
EDITOR
DEPACO編集部
編集長 望月
コロナ感染対策の緩和で、ようやくリップの強いYSLの真骨頂です。メイクや〈YSL〉が大好きでこの道に入ってきたBAさん達が、思う存分そのスキルを発揮できるようになったことを嬉しそうに語る長谷さんの笑顔が印象的でした。
新聞記者やビューティ業界紙の編集記者を経て、大丸・松坂屋に入社。化粧品各社の戦略やビジネスなど、ビューティ業界を見つめて早10数年。年齢に伴う肌悩みに向き合いつつ、無理をしない「ながら美容」を追求する編集部最年長。愛犬の散歩で1日平均1万歩の健脚が自慢。
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