【デパコス名鑑Vol. 6】〈イヴ・サンローラン〉のルージュ ヴォリュプテ シャインに迫る!
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ムッシュ イヴ・サンローランが手がけたビューティライン
IZACO(左):「ルージュ ヴォリュプテ シャイン」の前に、まずは〈イヴ・サンローラン〉のことから伺います。
〈イヴ・サンローラン〉といえば、ファッション界をリードするビッグメゾン。「モードの帝王」と言われたデザイナーのムッシュ イヴ・サンローランは、映画になっているほど有名ですよね。
そのブランドから、どのような経緯でビューティラインが誕生したのでしょうか。
野山(右):今でこそ、ファッションブランドがビューティラインを手がけることは珍しくなくなりましたが、創業者であるデザイナー自身がスタートさせたのは〈イヴ・サンローラン〉が先駆け。彼が、1978年に〈イヴ・サンローラン・ボーテ〉を立ち上げました。
IZACO:どんな思いから、ビューティラインを?
野山:ムッシュの有名な言葉に、「私の創った服を着る女性に、顔を与えたい」というものがあって。
彼は、“服を作る人”ではなく“女性のスタイルを創る人”でした。服でいくら素敵に着飾っていても、お顔とのトータルで“スタイル”は生まれるものだと考えていたんですね。カラーメイクがでてきたのは必然的なことだったんです。
IZACO:服も顔もトータルで“スタイル”をプロデュースする、ということですね。
野山:服のコレクションを発表するときのルックにも、「メイクはこれ」と自身で絵を描いていたんですよ。
IZACO:野山さんの印象に残っているルックは、どんなものですか?
野山:〈イヴ・サンローラン〉が1966年に発表した、女性のためのタキシードスタイルですね。そのアイコンである “マスキュリンな黒いスーツ”に、「赤い口紅を塗ろう」と提案したのがムッシュ。
IZACO:女性が黒いスーツというのも、そのファッションに赤い口紅を合わせるのも、斬新だったのでしょうね!
野山:そのような経緯で生まれたのが、今でも展開している「ルージュ ピュール(※1)」。〈イヴ・サンローラン・ボーテ〉が誕生した1973年からある商品です。
IZACO:口紅というのは、ブランドにとって特別な存在だったのですね。
※1 現在の商品名は「ルージュ ピュールクチュール」
02
女性が“口紅を塗る”を、再びブームに!
IZACO:〈イヴ・サンローラン〉の店頭に行くと、圧巻のリップコレクションが印象的ですよね!種類もカラーも豊富なブランドというイメージがあります。
野山:リップは、ひと塗りで、見た目も気分もガラリと変えてくれるもの。「ビューティで自信をもって、気分を上げていこう」というブランドのフィロソフィーを象徴するアイテムです。世界的なトレンドをけん引してきた自負もあります。
IZACO:そのリップコレクションのなかで、いよいよ「ルージュ ヴォリュプテ シャイン」の話を!こちらは、どのように誕生したのでしょうか。
野山:あまり知られていませんが、「ルージュ ヴォリュプテ シャイン」の発売前、2008年に、「ルージュ ヴォリュプテ」というリップを発表していました。
でも実は、あまり売れなかったんです……。
IZACO:なぜ、注目されなかったのでしょう?
野山:当時はリップグロスがブームで、女性が口紅をつけない時代だったんです!
IZACO:たしかに……!きちんと発色する口紅は使わず、グロスのツヤ感で仕上げるという時代でしたね。
野山:でも、私たちは、多大なるポテンシャルを感じていたんです。
商品名の「ヴォリュプテ」は、フランス語の「官能的」という意味で、つけ心地のよさ、甘いマンゴーの香り、ジュエリーのようなパッケージなどで「官能的」な世界観を表現しています。
見た目もかわいいし、つけ心地もいいし。こんなにすばらしいリップなのに、なぜ売れないんだろう……と思い、それなら「口紅自体をブームにしてしまおう!」と決意しまして(笑)。
IZACO:さすが、トレンドを生み出してきたファッションブランドのDNAを感じますね!
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攻めるキャッチを付け、「ルージュ ヴォリュプテ シャイン」誕生
野山:「ルージュ ヴォリュプテ」シリーズのひとつとして、「ルージュ ヴォリュプテ シャイン」が登場したのが、2013年。これをきっかけに、口紅を塗らない人たちが塗りたくなるプロモーションを計画したんです。
IZACO:いったい、どんな計画だったのでしょうか?
野山:ひとつひとつのカラーにキャッチコピーを付けました。恋愛にまつわる占いっぽいキャッチコピーで、色をイメージしやすくしようと。しかも、〈イヴ・サンローラン〉らしく、攻める感じの言葉で(笑)。
IZACO:攻める感じですか?(笑)
野山:「プロポーズさせるミルキーコーラル(15)」や、「小悪魔アプリコットレッド(12)」「女豹の赤リップ(4)」とか。
IZACO:女豹……インパクトがありますね(笑)。カラーに覚えやすいキャッチコピーを付けるのは、すごく今っぽいです!
野山:「ルージュ ヴォリュプテ シャイン」は、シリーズのなかで、“ザ・王道”というポジショニング。とろけるようなテクスチャーや官能的なツヤ、絶妙な発色など、万人ウケしやすいアイテムということに加え、このキャッチコピーで“口紅ブーム”の火付け役になったんじゃないかな、と思います。
04
約10年のリップトレンドが分かる、カラー変遷
IZACO:カラーラインアップは、2022年4月現在で全50色。発売当時からは変わっていますよね。
野山:新陳代謝をしつつ、精鋭の50色ですね。リップのトレンドをいち早くけん引できるよう、色づくりにはこだわっています。若いナンバーから順番に並べていくと、リップトレンドが分かりますよ。
発売当初に一世風靡した清楚で華やかなピンクベージュから、赤リップブームになって、バーガンディが流行って。最近だと、2021年1月に発表した“血色ブラウン”がトレンドに。
IZACO:いつの時代もいち早く「新しさ」を感じることができたんですね。そして、当初からの素敵なカラーが残っているのも、うれしいことです。
野山:人気カラーは今でも残しています。リップメイクが多種多様になってきて、好きなカラーを自由に楽しめるようになったのかなと思います。すばらしいことですよね。
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初心者におすすめ!人気カラー ベスト3
IZACO:色選びに迷う方も多いかと思います。はじめて使う人におすすめを教えてください!
野山:基本的には、豊富なカラーのなかからお好きなものを選んでいただければと思いますが、今の人気トップ3は、本当に肌馴染みがよくてどなたにも似合いやすいので、それをご紹介しますね。
IZACO:トレンドの“血色ブラウン”のカラーが揃っていますね。一見似ているように見えて、塗ってみるとニュアンスが違いますね!
野山:いずれも、肌馴染みがいいのが特徴。“血色ブラウン”シリーズは、唇の色を解析して、その色のトーンを変化させて作っています。唇の色の延長線上にあるカラーだから、すごく自然で、馴染みがいいんです。
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持っているだけで絵になる、美しいパッケージ
IZACO:パッケージの美しさも、このリップの特徴ですよね。
私は友人から就職祝いにプレゼントしてもらったのですが、彼女が、「パッケージが素敵だからこれにした」と。
リップを塗るときの所作がエレガントになるような気がするし、ポーチにしまう仕草も美しくて……。
野山:「ジュエリーのような存在感」をテーマにしたパッケージなんですよ。
IZACO:なるほど、美しいわけですね。
野山:真ん中に配したリングのモチーフは、フランスで「カルーセル」と呼ばれるメリーゴーラウンドなんです。フランス人にとって、楽しい思いが込められています。
IZACO:これを持っているだけで気分が上がる感覚は、私自身もよく分かります!
大人の女性の仲間入りをした気がして。そして唇に塗ると、やる気スイッチが入ります。
野山:パッケージの美しさを含めて、リップは総合体験。つけ心地のよさ、見た目のかわいらしさ、気分を豊かにする香り……と、五感で楽しむことで、自信をもてるようになるのだと思います。
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オリジナルの1本になる刻印サービス
IZACO:パッケージといえば、刻印サービス(※2)も行っていますよね。刻印があると、さらに“特別な1本”になる感じがします。
野山:「お守りリップ」として愛用してくださる方も多く、その思いをどう叶えていけばいいのかと考えて、名前や記念日を刻印できるように始めました。
IZACO:自分だけの1本になるのは、うれしいです。モチーフが豊富で、よりパーソナライズできるのがいいですね。
野山:以前はプレゼント用が多かったのですが、近ごろは自分のための刻印が増えたんです。
最近、多いのがアーティストや俳優など「推し」の名前を刻印すること。SNSにアップして、推し活のツールにするのが流行っているようです。
IZACO:刻印にもトレンドがあるんですね!
※2 公式オンライン ブティックと一部店舗、イベントでの取り扱い
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勝負リップは、マンゴーの香り?
IZACO:先ほど「リップは総合体験」とおっしゃられていたのが印象的で。「ルージュ ヴォリュプテ シャイン」でいうと、香りも五感に響くひとつです。マンゴーの香りって、珍しいですよね。
野山:なぜマンゴーなのか、明確な理由などはないようですが、「フレグランスをまとったときのような気分になる」ということです。
IZACO:たしかに、おいしい香りで心が満たされますよね!
野山:だからこそ、デートのときに、女の子がつけるのだとか。
IZACO:勝負リップとして、若い世代にも愛されているということですね。世代を超えて、ファン層が幅広いのは素敵ですね。
野山:発売から9年経ちますが、いつまでも新鮮で、欲しいリップと思ってもらえるのはうれしいです。
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「ルージュ ヴォリュプテ キャンディグレーズ」が新登場
IZACO:2022年1月に、新しいテクスチャーの「ルージュ ヴォリュプテ キャンディグレーズ」が登場しましたよね。
さっそく私も購入して使ってみたのですが、リップの進化を感じるつけ心地でした!
野山:“気分を高揚させる”というコンセプトはシリーズ共通で、シロップのようなむっちりとしたテクスチャーがもたらすツヤと、ジューシーなキャンディカラーが特徴。
そして、スキンケア成分を高配合しているから、唇のケアもできるんです!
IZACO:すごくやわらかくて、きちんと発色して。つけていてウキウキするんです。
コロナ禍でマスクをする生活になって、リップメイクを楽しむ機会が減ってしまいましたが、気持ちを変えてくれるアイテムですよね。
10
マスクに負けず、リップメイクを楽しむ!
野山:この新作を発表するとき、私たちは決めたんです。「もう、マスクに負けない!」って。
ここ2年ほど、マスクに付きにくいとかケア効果ばかり気にするようになり、華やかになって、きれいになって、気分を上げて……という口紅本来の楽しさが薄れていたと思います。
だけどこの製品では、ネガティブなメッセージではなく「リップを塗る喜びを、解き放とう!」と宣言して。
IZACO:すごく素敵な考え方ですね!さすがにもう、マスクのことばかり気にするのは飽きてしまって。もちろんマスクはするんですが、リップメイクの楽しさも満喫したいんですよね。
野山:リップメイクに対するブランドからのメッセージが、新作には詰まっています。
IZACO:口紅を塗るときの、あの楽しさや、メイクを仕上げる、最後のスイッチとしての大切な役割を再び見直す機会にしたいですね!
野山:発売早々に大人気になり、「みんな、やっぱりリップメイクをしたいんだな」と思って。口紅は、メイクのなかでも一番気分を上げてくれるもの。製品を通して、「パンデミックに負けず、メイクを楽しみましょう!」と、伝えていきたいです。
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"ルージュ ヴォリュプテ シャイン"の歩み
【デパコス名鑑】第7回は、6月に公開予定!〈スック〉の「ザ クリーム ファンデーション」が愛される理由に迫ります。
EDITOR
DEPACO編集部
エディター IZACO
入社後、お得意様営業部で化粧品企画の担当などを経てDEPACO編集部へ。化粧品との出合いは"舞台メイク"であったことから、カラーメイクなど「気分が上がる・元気になれるメイク」が好き。最近の休日はもっぱらジム通い。
- ※この記事は、当記事の公開時点のものです。
- ※価格は全て税込です。
- ※写真と実物では、色、素材感が多少異なる場合がございます。
- ※取り扱いの商品には数に限りがございます。
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デパコスの中でも「名品」と呼ばれる一品には、長い間人々に愛される理由がある。
DEPACO編集部が、"愛されコスメ"の誕生秘話や進化ポイントなどをブランドのキーマンにインタビュー。その秘密に迫ります。
第6回は、〈イヴ・サンローラン〉の「ルージュ ヴォリュプテ シャイン」。
同商品を愛用するIZACOが、日本ロレアル株式会社 イヴ・サンローラン・ボーテ事業部のコミュニケーション マネージャーである野山佳世子さん(以下、野山)に、お話を伺いました。