【十人十色の美衣食住・前編】パーツモデル・美容家 金子エミさんにインタビュー
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パーツモデルにはどのようなことがきっかけでなられたのでしょうか?
実家が都内のクリーニング屋なんです。その近所に大手の芸能プロダクションがあって、そのプロダクションのマネージャーさんがうちのクリーニング屋をよく利用してくださっていて、私が店番をしている時にスカウトしていただいたんです。その方は有名な芸能人の方のマネージャーさんで、最初「キレイだね」って言っていただいたのでタレントになれるかと思ったら、“手”を褒めていただいていて(笑)。ちょっと残念な気もしましたが、それまで自分の手がきれいだなんて一度も思ったこともなければ、周囲から褒められることもなかったので、驚きました。父親の手が大きくて指が長かったので、父の手にそっくりだな、とは思っていましたけど。当時はスポーツ系の専門学校に通っていて、美容への関心も全くなかったので、粉をふいているようなガサガサした手だったと思うんですけど、それがきっかけでパーツモデルを始めるようになったんです。
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パーツモデルとしてこれまでずっと第一線でご活躍してこられた、その秘訣は何だと思われますか?
みなさん「パーツモデルの仕事」って華やかな感じを想像されていますよね。白魚のようなキレイな手は化粧品やジュエリーの仕事に向いてます。でも、実際はパンを割ったり、オーディオのボタンを押したり、ドレッシングをかけるなど、生活に密着した手を表現する仕事が一番多いんです。パーツモデルって指が長い方が多いんですが、私は指が短く、いわゆる“美しい手”ではないのに、これまで第一線で仕事をさせていただけたのは、私の手が“普通の手”だからだと思っています。
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パーツモデルの仕事の中で大切だと思われていることは何ですか?
CMのお仕事ってオーディションが必ずあるんですが、ありがたいことに95~100%の割合で仕事をいただくことができています。オーディションに行くと絵コンテがあって、手の平に丸くムースを出す、なんていうお願いされた動作を実際にやるんです。CMの現場は人も大勢いますし、何度もテイクを重ねられないような雰囲気なので、お願いされた動作を一回で決められるスキルって、とっても重要。だからパーツモデルって、手の美しさだけでなく、“職人”的な要素も求められる仕事だと思っています。私の場合、百発百中でそんな動作ができちゃうようになりました(笑)。
それに手って、その人の神経が表れやすくて、カメラが寄ったりするとものすごく手が揺れているような画になってしまうんです。もともと私は器械体操の選手だったので、10cm幅の平均台の上で一発勝負の演技をする機会が多かったこともあって、最初から案外平気だったんですよね。だってパーツモデルは“手”だけじゃないですか(笑)。そう考えるとたくさんのスタッフがいても、あまり緊張しなくて。だから、根性がすわっていないとできない仕事でもあるかもしれませんね。パーツモデルのポージングは人に教えてもらうのではなくて、撮影のテスト用ポラロイドを確認して研究します。手のポーズって、力を入れるというよりも抜くのがコツなんです。気持ちを入れてきれいに見せるとかではなくて、テクニック。肩よりも外に肘を出さないようにするだけで、女性らしいポーズになるんです。
あと関節ワザというか、体が柔らかくなかったらできないポージングを求められたりもするんです。これも器械体操をやっていたおかげなのか、ちょっと無理なポーズも関節が柔らかいので無理なくできちゃうのはラッキーでした(笑)。体の柔軟性が大事だと思っているので、今でもストレッチはしています。
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年齢を重ねると、パーツにも変化が現れます。ボディケア、ハンドケアは日常生活でどのようなことに気をつけられていますか?
心臓より下に手を置くことはしないようにしています。どうしても血管が目立ってきてしまうんです。血管の問題さえなければ、まだ使い物になると思うんですけど(笑)。でも血管が目立った手はどうしても年齢を感じさせてしまうんですよ。だから手のマッサージは毎日していますね。骨格は変わらないと思いますが、私流のマッサージを1カ月続けるだけで、手がなめらかな印象に変わると思います。
手もそうなんですが、ボディケアってみなさんちょっと保水が足りていないんですよね。体も水分量を下げないことがとても重要です。だからもし私の肌が若く見えているんだとしたら、与えるだけではなく角質ケアもして、保水して、美容液を塗る、っていうシンプルなケアを30年間ずっとやってきたから。あと膝や脇とか見えないところというか、誰も近づいて見る人はいないような部分のケアを心掛けてきました。人には見えない部分をきれいにしておくっていうのが、何か人に感じさせているものがあるといいなと思って続けているんです。するかしないかで全然変わってきますからね。
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金子さんおすすめのボディケア、ハンドケアを教えてください。
手も体もしっかりと水気を拭きとって肌を乾燥させないことが大切です。
ボディはお風呂あがりにやさしくタオルドライしてから全身にしたたるぐらい惜しみなく化粧水で保水してから、クリームまたは美容液をしっかり肌になじませて保湿。そして週1回~10日に1回、角質ケアをするのがおすすめです。
それから一番手が荒れてしまう洗い物をしながらできる「洗い物パック」もぜひ試していただきたいです。ハンドクリームはなんでもいいので、たっぷり塗って、キッチンなどで使う使い捨てのポリエチレンの手袋をはめてからゴム手袋をするだけです。手荒れが気になる時は洗い物の後にさらに化粧水と美容液でダブルケアしてみてください。私はこの方法でパーツモデルを続けられたようなものですから(笑)。
あと、コロナ禍で手洗いや消毒の回数が増えたことや、携帯やパソコンの影響で指先が乾燥してしまっているので「指先パック」もいいですよ。小さいボールに指先がつかるぐらいのお湯(42~43℃ぐらい)を入れて、小さじ1杯ほどのボディクリームを溶かして3~5分ほどつけるんです。そうすると爪周りが柔らかくなるので、その液をコットンにしみ込ませて甘皮を拭き取ると、甘皮のケアもできて一石二鳥です。
ハンドクリームの塗り方のコツはまず手の平にオリーブ粒大ぐらい出してから、両手で温めてから全体になじませていきます。私は指の第二関節を“手の目尻”と言っていて、この部分はとても年齢が出やすいところなので、指を曲げて、指のシワとシワの間にもしっかり塗り込んであげることがポイント。だから肘や膝などの関節は全部曲げて、首なんかは上を向いて、首の後ろは下を向いて塗り込んでください。やっぱり丁寧に塗ることは、すごく大切ですね。
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金子さんが考える“美しい手”とはどのようなものですか?
指の長さとか細さなど、形は気にしなくてもいいんじゃないかと思うんです。それよりも大切なのはやはり清潔感。乾燥していたり、爪周りがささくれていたりすると清潔感が失われてしまいますよね。手のスキンケアが行き届いていたら清潔感が生まれると思うんです。それは手だけに限ったことではないんですが、そんな清潔感が保たれているのが“美しい手”だと思います。
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パーツモデルを始められて30年経った今も年齢を感じさせないスタイルを保たれていますが、何か心掛けていることはありますか?
器械体操をやっていたこともあって、体重制限も厳しかったですし、筋肉をかなりつけるので、背が伸びなかったんですよね。体重管理は自分でおこなっていて、今日は重いな、と感じるとバク転をして確認していましたね。先日後輩の田中理恵さんとお会いした時になんかのポーズをしていたんですけど、田中さんも同じポーズをずーっとキープできちゃうんですよ(笑)。体が柔らかいって実はすごく大事で、足首や股関節が柔らかいと歩いているだけでもストレッチできるんですよね。足首が動くと、ふくらはぎの筋肉もいっぱい動くから、自動的に筋肉の運動がたくさんできるんです。だんだん年をとっていくと関節って動かなくなっていくので、体の可動域を広げることはいくつになっても心掛けたいですね。
普段の運動はストレッチと、長男が世界チャンピオンを目指して水泳をやっているので、週1回ぐらいは泳いでいます。あと泳ぐだけではなくて体幹トレーニングも一緒にやっています。常に体を動かしていないと気持ち悪い感じがしてしまうので。
そんな運動を始めたのはコロナ禍の影響で動かない期間ができてしまって、太ってしまったからなんです。そのおかげもあってか、体が引き締まりました。体重は戻らないんですけどね(笑)。でもあまり痩せすぎていてもシワとかも気になるし、健康的でいるっていうことがまず一番だな、と考えるようになりました。
<金子エミさんプロフィール>
1991年にパーツモデルをスタートしてから、コマーシャル100本以上、雑誌出演を数100本こなし、現在も現役モデルとして活躍。独自の美容法をまとめた「お家でおこもりエステ」(ワニブックス)が話題となり、美容家としても活躍の場を広げ、さまざまなテレビ番組にも出演。2010年には化粧品ブランド「emito」(エミト)をプロデュースし、シンプルで日常生活でも実践しやすい美容法を提案している
後編では食生活やスキンケアについても伺いました。
編集/㈱メディアム 成田恵子、執筆/北村文、撮影/Suat Koylu、メイク/木村三喜
EDITOR
DEPACO編集部
副編集長 秀島
プロモーション歴10年以上、DEPACOの生みの親。ビューティ系企画~編集~広告~イベントまで幅広く携わる。経験とはうらはらに、百貨店入社をきっかけにデパコスに触れ始めた“保守派”でかつ、"自信はないけど少しはこだわりたい派"。趣味はアート&銭湯めぐり。
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“十人十色の美衣食住”
ひとそれぞれ、さまざまな「美」を大切にされている方々に迫ります。
今回のゲストはコマーシャル100本以上、雑誌出演も数100本と、パーツモデル30周年を迎えた現在も現役として活躍。独自の美容法をまとめた著書「お家でおこもりエステ」が話題となり、美容家としても活躍の場を広げている金子エミさんです。
■【十人十色の美衣食住・後編】パーツモデル・美容家 金子エミさんにインタビュー は7/13(水)公開予定→