新・デパコスフロアのお客様。【辛酸なめ子が行く!デパコスフロア探訪記】
男性のお客様もたくさん訪れるデパコスフロア
まず、外資系のコスメブランドで働くBAさんのSさんに伺ってみました。
「最近は男性のお客様も多いです。うちのブランドの商品を他店舗で買ってくださったお客様が、縁を感じて来てくださったり……。先日はそんな男性の愛用者が1日に2人も来店したんですよ」と、楽しそうに語るSさん。デパコスフロアに男性のお客さんが来るのは女性としては刺激にもなり、コスメ市場の経済が活性化しそうなので歓迎したいです。
「その愛用者の男性は、『僕はこれとこれ、買ったんだよ』と報告してくださいました。他店舗なんですが、たくさん買ったことをただ報告に来てくださったんです。1時間くらいお話しました。たいていこういうお客様は、地方から東京に出張に来ていて、新幹線の時間までデパートに立ち寄られた、というケースが多いです」
結局こちらの店舗では何も買わず、過去にたくさん買った自慢だけして、駅に向かわれたそうです。もしかしたら地元の店舗でも「この前、大丸に行って……」と報告しているのかもしれません。
ほほえましいですが、自分も淋しい時にアパレルショップとかでやりがちかもしれない、と思い当たるふしが。同じブランドの他店舗で服を買ったことを、さりげなく報告して、「ありがとうございます」と店員さんにお礼を言われることで承認欲求を満たすという……。その出張中のおじさまたちも同じく、誰かと会話して認めてもらいたかったのかもしれません。若い店員さんと話すことで刺激と活力も得られます。
「お話にいらっしゃって、ついでに買ってくださるお客様も多いですよ」と、Sさん。BAさんと楽しい時間を過ごした記念なのでしょう。今度からコスメショップやアパレルショップで店員さんと楽しくトークさせてもらったら、何かしら買わなければ、と反省しました。
個性あふれるお客様
高級な外資系ブランドだからこそ、セレブなお客さんもいらっしゃるそうです。Sさんは驚きのエピソードを教えてくれました。
「会社経営者の男性で、すっごくまとめて買ってくださる方がいます。忘年会の時に社員に還元するそうで、そのために段ボールにいっぱい買われます。とくに価格も気にせず……。総額ですか?100万円は超えています。忘年会では、1つの部屋に商品を大量に置いて、『好きなの持って帰っていいよ』と言うらしいです。『みんな喜ぶんだよね』っておっしゃっていました」
その会社で働きたいくらいです……。しかも社長さんは領収書を切っていなくて、自腹で大盤振る舞いしているらしく……そうやって社員に還元している会社は今後も発展していくことでしょう。
「お客様と会話するのが楽しい」と話していた国内ブランドのTさんにも話を伺うと、時々かなり強者のお客さんがいらっしゃるとか……。
「サンプルをたくさんご希望される方もいらっしゃいます。2、3人で来て、親の分、姉の分、妹の分とか。難しいですけどね。やっぱり数に限りがあるので。サンプルがなくなってしまったら『ご用意がないんです』と、お断りするしかないんですが……」
と、申し訳なさそうに語るTさん。実際に親族中にそんなにサンプルを配ることってあるのでしょうか……。その調子で、甥の分、姪の分、孫の分、いとこの分、と、どんどん増えていきそうです。
そこまで複数もらおうとする勇気はないですが、無料サンプルが魅惑的なのはよくわかります。コスメを買ったあと、BAさんがサンプルを用意してくださっている時など、一挙一動から目が離せません。とくにサンプルの小袋は旅行に行く時などに役立ちます。またいつか旅行できるようになったら……と夢が広がります。
お客さんの夢や願望や経済力がうずまくデパコスフロア。そんな空間にいると、ふだんとは違うテンションになって、お客さんのキャラも全開になるのかもしれません。どんなモードでもBAさんは受け入れてくださると信じて安心して買い物したいです。
EDITOR
漫画家・コラムニスト
辛酸なめ子
1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。 武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。 人間関係、恋愛からアイドル観察、皇室、スピリチュアルまで幅広く執筆。 近著に『辛酸なめ子、スピ旅に出る』(産業編集センター)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中公新書ラクレ)、『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。
- ※この記事は、当記事の公開時点のものです。
- ※価格は全て税込です。
- ※写真と実物では、色、素材感が多少異なる場合がございます。
- ※取り扱いの商品には数に限りがございます。
- ※入荷が遅延する場合や急遽販売が中止になる場合がございます。
美意識が高いお客さんが集まるデパコスフロア。良い意味で個性的な方もいらっしゃるようです。客として短時間だけ立ち寄っているぶんには、きれいめなOLさんが多いな、という印象ですが、一日中接客をしているBA(美容部員)さんならもっと印象的な接客体験をしているはずです。