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【前編】ブランド設立5年で初コレクション発表。女性の魅力を引き出す服作りアイデアのインプット方法とは?ファッションディレクター・佐藤涼実さんにインタビュー〈十人十色の美衣食住〉

DEPACO編集部
エディター 高梨
2024/01/03

“十人十色の美衣食住”
ひとそれぞれ、さまざまな「美」を大切にされている方々に迫ります。

今回のゲストはアパレルブランド〈louren〉のクリエイティブディレクター兼デザイナーとして活躍されている佐藤涼実さん。ブランド設立5周年にして2023年9月、パリにて開催された「Paris Fashion Week 2024SS」で初のコレクションを発表しました。同世代の女性を中心に高い支持を集める佐藤さんのモノづくりへのこだわりやプライベートについてお話を伺いました。

01
佐藤さんはIT企業に勤務しながらファッションディレクターになられたそうですが、転身したきっかけを教えてください。

もともと服が好きだったということもあって、Instagramでスタイリングなどの日常を何となく投稿していたら、ありがたいことにフォロワーがちょっとずつ増えていったんです。それを見た方から、新しいファッションブランドの立ち上げを手伝わないか、とお声がけをいただいたのがきっかけです。
その方はインフルエンサーと組んでブランドを作りたいというクライアントさんに、インフルエンサーの方を紹介する仕事の方でした。当時はタレントさんのブランドも結構出てきて、流行していた時期だったというのもあったと思います。

佐藤さんはIT企業に勤務しながらファッションディレクターになられたそうですが、転身したきっかけを教えてください。

02
ファッションディレクターという職業に興味はありましたか?

服が好きというのは大前提ですが、どちらかというとモノづくりというか商品開発に興味があって、自分が着て見せるというよりもモノをつくりたいという思いが昔からありました
大学ではデザイン工学部でプロダクトデザインを学んでいたので、モデルさんに着ていただくモノをつくる“裏方”になりたかったんです。なので、ディレクションよりも、デザイナーなどのつくるほうに興味があったんです。
今はデザインもやっていますが、最初は服をつくる知識が全くなかったので、まずは自分が発信していくことから始めました。どんどんつくるほうにシフトしていきたいと思っていたので、今もそれを目指してやっています。

03
「これがいい」と何かを選ばれる時、どんなことを判断基準にしていますか?

本当に自分の感覚だけです(笑)。自分の中で好きなものが確立しているので、これまでも友人に勧められて何かを買うという経験をしたことがありません。自分に似合うものが分かっているのだと思うんです。
そういう自信というか、自分に合うものが分かる感覚は昔からあった気がします。父は建築家、母が美容師だったのもあって、クリエイティブというかモノをつくる系の家庭で育ったからか、物心がつく頃には、何かを選ぶ時は自分で選ぶタイプだったみたいです。

「これがいい」と何かを選ばれる時、どんなことを判断基準にしていますか?

04
会社を退社され、正式にディレクターとなってから、どんなことを心がけていますか?

お声がけいただいたのは社会人1年目の時で、よそさまからお話をいただいて始めるという、とてもありがたい機会だったと思うんです。でも新しいことを始める時には、自分発信でスタートしないと他責になってしまうという考えがあったので、一度はお断りしたんです
そして数カ月よく考えた上で自分のほうから「やりたいです」とお伝えしてスタートしました。なので、自分が言い出して始めたことだし、人も巻き込んでいるのだから責任を持って最後までやり抜かなければいけないと強く思っています
会社を退社する前にも「ディレクター1本でやったらいいのに」という声もいただいていましたが、今となっては自分の意志でディレクターとして立とうと決めたことが、仕事の軸になっていますね。ですから人に言われて何かを始めるよりも、自分で決断して行動することを一番大切にしています

会社を退社され、正式にディレクターとなってから、どんなことを心がけていますか?

05
〈louren〉は女性らしさと洗練された印象がありますが、服づくりではどんな点にこだわっていますか?

世の中のトレンドに影響されることもありますが、「女性の隠れた魅力を引き出す服」というコンセプトは、軸としてブレないと決めています
タイトな感じや大胆な肌見せのような女性らしさではなく、シルエットの中に数カ所肌見せを作るなど、女性ならではのデコルテやヒップラインの曲線美を生かした“品のある女性らしさ”をデザインのどこかにプラスしています。モードで洗練されたイメージの中に、ちょっとした女性らしさがある服づくりがベースなんです。
私自身がジャケットスタイルやセットアップが好きなので、フレアでフェミニンな感じよりもカッコイイ感じのテイストを入れながらつくっていますね。春夏にはちょっとした色物を入れることもありますけど、私自身のスタイリングで色を加える時は、バッグやシューズなどの小物で入れていくスタイルなので、色や柄をガツンと入れている服は少ないかもしれません。シルエットやディテールはシンプルでありながらも、素材にこだわった唯一無二のモノを作ることを大切にしています

〈louren〉は女性らしさと洗練された印象がありますが、服づくりではどんな点にこだわっていますか?

06
服づくりのインスピレーションはどこから得られていますか?またアイデアのインプットをどういうところからされますか?

“理想とする女性像”は常に持っているので、そういう方を街中で見かけた時にスタイリングなどをメモしています。いまはネットで情報収集することが主流かもしれませんが、あえてしないように心がけているんです。
なぜならネット上では、トレンドやキャッチーなものが挙がってきてしまうので、知らないうちに参考にしていて、他ブランドと似たり、独自の世界観が出せなくなったりしてしまうから。気づいたらそうなっているのが怖くて、気をつけています。
〈louren〉と似たテイストのブランドもありますが、そういう競合ブランドばかりを見るのではなく、メンズやストリートファッションとか、フェミニンな服やお姫さまのようなドレスも見るようにしています。さまざまな分野の服や美術館で見るものなどジャンルに縛られずに自分の目で見て触ったことを生かしていく、という感覚をすごく大切にしています。
また、特定の場所を決めてリサーチするのではなく、旅行先でもすてきな方を見かけたら、すぐスマホにメモします。箇条書きにするので、後から見返すと何を書いているのか分からない時もあります(笑)。メモを取るのは以前からの習慣なので、主人と旅行に行った時でも忘れてしまいそうなことは「ちょっと待って」と、メモに絵を描いたりして残しておきます。
すてきだなと思ったものは必ず記録に残して、引き出しをいっぱい作っておくというイメージです。アウトプットする時に引き出しがなくなってしまうのが一番怖い。なので、常に引き出しを満杯にしておいて、アイデアに詰まった時にそれを見返すことでヒントが湧いてくるようにするのは、常に心がけていることのひとつです。

服づくりのインスピレーションはどこから得られていますか?またアイデアのインプットをどういうところからされますか?

07
昨年の秋には、パリのファッションウイークで初コレクションを発表されました。ご準備で大変だったことはありますか?

まずパリもショーも初めてだったので、どこから始めよう?みたいな感じでした。〈louren〉の社長はかつてパリに住み、ファッションをやっていた方なので、いろいろ聞きながら少しずつ進めていきましたが、それでも分からないことがたくさんありました。
ショーが近づくにつれ、いろいろなものが形になっていくじゃないですか。そんな時に他のブランドのショーなどを見てしまうと、自分がブレそうになる時が何度もありました。〈louren〉は、舞台映えのする服ではないので、ショーになった時にどれぐらい海外の方からリアクションをいただけるか、その数分間で世界観を表現しなきゃいけないとなると地味すぎるんじゃないかなと、いろいろ考え過ぎてしまいました。そのうちに本当に分からなくなってしまい、第三者目線を入れようと、スタッフに聞いたり、社長に意見をいただいたりしました。“涼実さんらしい”コレクションになっているというスタッフからの意見に安心して、ギリギリ自分を保っている感じでしたね(笑)。

昨年の秋には、パリのファッションウイークで初コレクションを発表されました。ご準備で大変だったことはありますか?

08
出展するにあたり、服づくりで意識したことや変化したことはありましたか?

ランウェイショーなので、モデルさんがウォーキングするという形でお見せするのですが、今までウォーキングが前提の服づくりをしたことがなかったんです。歩いた時の動きや着た時の肌の出方など、モデルさんによって全然違う服に見えて戸惑いました
ショーのためにオートクチュールで作った服もあったんですが、生地の使い方やドレープの出し方などは新たな勉強になり、いつもとは違う服づくりでとても刺激的でした
今回のショーに声をかけていただいた1年前からどんなコンセプトにしようかと考え始めました。でもこれまで直感で生きてきたタイプなので、何年もかけてゆっくり考えるのが苦手で(笑)。結局、本格的に動き始めたのは4~5カ月前からになりました。ショーでやるんだったらどんな感じの服で、どういう見せ方をしていくのがふさわしいのかなとフワッと考えながらいつも通りの服をつくっていましたね(笑)。

出展するにあたり、服づくりで意識したことや変化したことはありましたか?

09
出展を終えられた感想をお聞かせください。

そもそもブランドを始めた時にはコレクションへ出展することを夢にすら描いていなかったですし、私なんておこがましいと思っていました。ブランドを立ち上げて5年ほどですが、服を見て〈louren〉を選んでいただけたことはとても光栄だと思っています
準備がとにかく大変だったので、終わってすぐは「もうコレクションになんて二度と出ない」とスタッフと話していました。でも日が経つごとに大変だったことより楽しかった思いのほうが強くなってきて、また機会があったら出展したいと思うようになっていました(笑)。本当に他では味わえない達成感があったんです
日本のアパレル業界だと暗黙のルールがあったり、知名度みたいなものを基準にされてしまう印象があったりするのですが、今回はそれを感じずに済みました。それにコレクションがパリ・ニューヨーク・ミラノとある中でも、大好きなパリで出展できたこともうれしいことでした。毎年となると費用や時間的な部分もあるので難しいですが、また数年後に機会があったら出展したいと思える貴重な機会になりました

出展を終えられた感想をお聞かせください。

<佐藤涼実さんプロフィール>
デザイン工学部システムデザイン学科を卒業後、WebデザイナーとしてIT企業に就職。2018年秋、アパレルブランド〈louren〉を副業として立ち上げる。2020年に会社を退職し、〈louren〉のディレクター・デザイナーを本業に。2021年にはブランド立ち上げ当初からの夢である実店舗を東京・広尾にオープン。ブランド設立5周年を迎えた2023年、9月にパリで開催された「Paris Fashion Week 2024SS」で初のコレクションを発表。

後編では、佐藤さんのプライベートや愛用アイテムについて伺いました。

編集/㈱メディアム 成田恵子、執筆/北村文、撮影/Suat Koylu


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EDITOR

DEPACO編集部

エディター 高梨

お会いする前はクールな方の印象でしたが、実際にお会いするとお洋服の印象と同様に、カッコイイだけではなく、その中に柔らかさと上品な女性らしさを感じる話し方や所作が素敵で、つい目を奪われてしまいました…!
肌悩み
  • シミ・たるみ
好きなメイク
  • 素肌風ベースにリップしっかりめ
コスメの悩み
  • メイクの引き算が難しい

旅行誌の出版社で編集職を10年以上経験。出産を機にキャリアを見つめ直し、今後は大好きな美容の情報発信をしたいという想いでDEPACO編集部へ。美容はスキンケアやベースメイクでの“土台作り”が好き。趣味は旅と料理。

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