【後編:パティシエール・岩柳麻子さんにインタビュー】ケーキ作りのインスピレーションの源となる、ケーキとはかけ離れた趣味やとっておきの愛用品とは?〈十人十色の美衣食住〉
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看板メニューである「パルフェビジュー®」が誕生したきっかけは?
女性誌『婦人画報』で、「ハイエンドブランドや博物館に飾られているような、昔から受け継がれているようなジュエリーをイメージしたお菓子を作る」という企画があり、そこから誕生しました。
パフェというよりも、グラスの中でジュエリーのクリスタルな質感や深みのある輝きを層に分けて表現してみようと思って作ったのが最初の「パルフェビジュー®」です。
当初は旬の果物などは考えずに、ただキラキラとしたものを集めて層を作っていった感じでした。
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新作のパルフェはどのようにして考えられていますか?
毎月2種類の新作を出しています。果物の旬の時期は毎年変わらないので、その年のテーマに合わせてアレンジしていく感じです。
パフェなのでジェラートは入れますが、必ず使う食材はありません。まず旬の果物があって、アクセントに何を組み合わせようか考え、同時にその果物がよりおいしく感じられる飲み物をバリスタに作ってもらい、パフェの価値をより高めるよう心がけています。
ボリュームがあるので、飽きずに最後まで食べてもらうにはどうしたらいいか、ということはいつも考えています。
最初は果物そのものの味を楽しんでもらい、組み合わせによるバリエーションを楽しめる層、終わりかかる層になるとちょっと塩気や酸味のあるものを入れて味を変化させ、最後は凝縮した果物の味で終わるという構成にしています。
2週間に1回メニュー撮影があるので、考えている期間は実質1週間ぐらいですが、仕事のルーティンの中に組み込まれている絶対に譲れない作業です。
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サイクリストだと伺ったのですが、興味を持たれたきっかけを教えてください。
20年ぐらい前から始めました。車の免許を持っていないので、移動は電車を使うしかありませんでした。でも新幹線に乗らないと行けない場所でも自転車だったら行けるんですよね。
1日かけて200kmを走るロードレースに参加するうちにどんどんハマってしまいました。ロードレースは200、300、400、600kmと規定距離を制限時間内に完走するとブルベ(認定)がもらえるんです。それをクリアした人は「Paris Brest Paris」という1200kmを走る世界最高峰といわれるアマチュアレースに参加できるんですが、私は残念ながらまだ資格を持てていません。
最初は、主人が参加したひたすら山を自転車で登るヒルクライムレースの応援に行きました。でもスピードは速いし一瞬しか見られないのがつまらなくて、自分でも乗ってみようと思ったのがきっかけです。
通勤で自転車に乗ることから始めて、1~2時間ぐらいかかる場所まで行くようになって少しずつ距離を延ばしていき、ブルべ(認定)がもらえるレースに参加するようになりました。
今、乗っているのは、ツール・ド・フランスで3回優勝しているグレッグ・レモンが1990年優勝した時の記念モデルで、限定100台のロードバイクです。
アメリカやイタリアの自転車メーカーもありますが、個人的にフランス製が好きです。フランスの老舗自転車ブランドであるTIME社の自転車用にカーボン繊維が織られる動画で観た、白衣を着た職人の作業姿が素敵で、めちゃくちゃ感動しました。
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体調管理のために何か心がけていますか?
まさに毎日の通勤にロードバイクに乗ることですね。ON&OFFを切り替えるスイッチ代わりにもなっていると思います。たまに遠回りしたり、いつもと違う道を行ったりすることもあります。
雨の日でも濡れることはあまり気にならないので、ちょっとの雨量だったら全然気にせずに乗っています。
レースに出るような格好もしていられないので、レギンスやビブス、インナーウエアはロードバイクウエアの〈ラファ〉のものを愛用しています。夏は汗をかいてもすぐ乾くので体を冷やさないですし、冬も温かいので、通気性と保温性の素晴らしさが気に入っています。
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愛用されているアイテムを教えてください。
もともと服飾系だったので服が大好きなんです。素晴らしいものづくりをしているクチュールブランドの〈メゾン マルジェラ〉の服は、2~3カ月に1回買い足しています。
現在の〈メゾン マルジェラ〉はジバンシィやクリスチャン・ディオールのデザイナーでもあった、素晴らしいオートクチュールを作るジョン・ガリアーノがクリエイティブ・ディレクターで、毎年発表されるコレクションがどれも芸術作品のようで素敵なんです。
これはスモーキングガウンというもので、中世の男性が素敵なスーツに臭いがつかないようにタバコを吸うときに着ていたガウン。服飾の歴史も大好きなので、おしゃれだなと思って買ってしまいました。休みの日は家にいることが多いので、このガウンを着て過ごすのが至福のひとときです。
本当にコレクションとして持っているだけなんですが、ちょっと西洋史に関連しているようなデザインや配色の洋服があるとつい買ってしまいます。
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岩柳さんにとって、人には理解されないかもしれない(もしくは理解されなくてもいい)けど自己満足のためだけにやっていらっしゃる趣味や習慣などはありますか?
自転車での通勤時にあえてまわり道をしていることです。
通勤って普通は最短ルートを選ぶと思うんです。でも、ちょっと裏道に入って峠を越えるように急な坂を登ったり、住宅街の木々を見たり、鳥が鳴いているのを聞いたりすると季節を感じることができて、私の一番のインスピレーション源になっていると感じます。
行きも帰りも時短したいと思いがちですが、あえて毎日寄り道をすることは、自分が大切にしている自己満足です。
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岩柳さんにとっての「美」とは?ご自身の生活のなかで「美」はどのような存在ですか?
「美」か「美ではない」かとなった時、同じものがきれいに並んでいたら、それはゴミのようなものであっても、すごく美しく見えたりすると思うんです。
ありとあらゆるところに「美」はあって、それを「美」と見ることができる心や、これが「美」だなと思う配置や空間から見つけ出すものだと思います。
とくに私は旬の果物に向き合うことが多いので、この苺のこの角度が美しいから見せたいとか、パフェだったらこの透けた空間がきれいとか、小さいところからでも圧倒的な美しさを感じることができます。
それを探せる心の持ちようや、自分が「美」を探していれば「美」になりますし、「美ではない」と思うものでも、「美」にするには、どうすればいいかは自分で作れるものだと思っています。
<岩柳麻子さんプロフィール>
服飾学校で染織を学んだ後、飲食店でのアルバイトをきっかけに食の道に。独学でパティシエールとしての技術を身に付け、2015年には自身の名を冠した「PÁTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」をオープン。女性雑誌の特集がきっかけで誕生した“宝石のようなパフェ”「パルフェビジュー®」が脚光を浴び、全国から多数のファンが訪れるお店へと成長。2018年10月には隣の敷地に「ASAKO IWAYANAGI PLUS」、2021年10月には同エリアに「ASAKO IWAYANAGI SALON DE THÉ」をオープン。自身の理想を追求すべく、日々厨房に立ち続けている。
前編では、岩柳さんがパティシエールになったきっかけやお菓子作りへのこだわりについて伺いました。
編集/㈱メディアム 成田 恵子、執筆/北村 文、撮影/鈴川 洋平
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EDITOR
DEPACO編集部
エディター 高梨
旅行誌の出版社で編集職を10年以上経験。出産を機にキャリアを見つめ直し、今後は大好きな美容の情報発信をしたいという想いでDEPACO編集部へ。美容はスキンケアやベースメイクでの“土台作り”が好き。趣味は旅と料理。
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“十人十色の美衣食住”
ひとそれぞれ、さまざまな「美」を大切にされている方々に迫ります。
今回のゲストはパティスリィ「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」のシェフパティシエール岩柳麻子さんです。完全予約制の看板メニュー「パルフェビジュー®」の新作考案に対するこだわりやスタイリッシュなお店のコンセプト、また趣味や愛用品に対する想いについて伺ってきました。