【十人十色の美衣食住・前編】ファッションモデル・俳優 イシヅカユウさんにインタビュー!
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ファッションモデルとして現在ご活躍されていますが、ファッションにはいつ頃から興味を持つようになりましたか?
子どもの頃から身に着けられたり、使えるものを作るのが好きでしたね。叔母がやっていた編み物を見様見真似でやってみたり、当時流行っていたビーズのアクセサリーなんかは本を見ながら作ってみたりして。何かを買うというより、自分が気に入る形だったり色だったり、より パーソナルに近いものをその当時から自分で作ってました。
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ファッションの始まりは、手作りの小物だったんですね。洋服に目覚めたのもその頃からですか?
小学校高学年ぐらいからですかね。当時「GALS!!」という漫画が流行っていて、それを見てギャルを目指していたんです(笑)。母と服を買いに行くと、いわゆる“男の子”の服を与えられてしまうので、その頃から近所の洋品店に行って、ひとりで服を買うようになったんです。当時ギャルっぽい服が着たかったんですけど、そんなイメージのものを安く売っている洋品店で、今思い返しても味のある店でしたね。
でも田舎に住んでいたので、ご近所の目も気にしなきゃならなくて。スカートはダメだけどブーツカットデニムやチビTはOKとか(笑)。着て許される範囲を擦り合わせてアイテムを選んでました。
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服飾の専門学校にも通っていたとお伺いしました。ファッションに対するこだわりはありますか?
“服に自分を寄せる”というより“自分らしさに服を寄せていく”ことですね。
中学・高校時代からそのまま服を着るというよりは、リメイクしてました。それは今でもやっていて、高いブランドの服に手を入れちゃうこともあるんです。自分がより着やすくアレンジするのが好きで。着古してほつれちゃった服はもちろん、買った時はそのまま着ていた服も、ちょっと
しっくりこないと感じたら、手を加えて着やすくしちゃいます。ある意味では服を大事にしている、ということでもあるのかな(笑)。
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イシヅカさんにとって「ファッション」(=装う)ってどんなものでしょうか?
自然とか生き物が好きなんですけど、鳥って、葉とか枝とかを集めて巣を作って自分を守るじゃないですか。そういうことの延長にあるのが「ファッション」なのかなと。人が“装う”ことって、ある意味“武装”に近いんじゃないかと思うんです。服を纏ったり、メイクすることの原点って、“負けないぞ”みたいな気持ちに基づいているものなので。
あとこれはまた違う意味でもあるんですが、自分の性に対して違和感を強く感じていた頃、ストレスから髪を抜くようになってしまって、それを隠すために帽子を被っていた時期があるんです。でも、そうやって帽子を被るようになったことで、辛いことを忘れられたり、楽しくお出かけできるようになって。自分と服の関係というか、服を纏うことの良さや大切さを感じられて、服に守られているという気持ちになりました。ただ隠すんじゃなくて、自分の好きなもので隠すことで、より自分の好きな形になれる。それも「ファッション」の良さだと思います。
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イシヅカさんが選んでいる映画や音楽を拝見すると、カルチャー好きな印象を受けます。影響を強く受けた時代はありますか?
「ファッション」と「音楽」って密接に関わって、進化してきたものじゃないですか。例えばチャールストンのような踊りが流行った時には、短いスカートが流行ったとか。そういう意味でも、全くそれを考えずに服を選ぶのは、私の中ではありえないって思っているんです。
強く影響を受けた時代というと60年代ですね。高校生の頃、愛読していた赤文字系のファッション雑誌で、その当時流行っていたのか、60年代風のミニスカートのAラインワンピースとか、カラータイツが取り上げられている記事や、本格的な60年代のヘアスタイルやバッチリまつ毛のメイクページを見て、“なんて素敵♡”とビビッときちゃったんです。当時インターネットもなかったんで、60年代カルチャーについて書かれた本を見ては、よく研究していましたね。学校が私服で通えてメイクもOKだったこともあって、膝上何センチのスカートを履こうかとか、いかに後頭部を大きく盛るヘアスタイルにするかにアイデンティティを持っていたりして(笑)。まさに映画「ヘアスプレー」の主人公と同じです。
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60年代のカルチャーって、多様性がありましたよね。今のイシヅカさんのインスピレーションの源に関連してますか?
ほんとに60年代って、ファッションも音楽もいろんなものが生まれた時代だったと思うんです。その時代のアイコンはツイッギーだったんですが、彼女が出演した20年代を描いた「ボーイフレンド」という映画を見て、20年代のファッションやメイクをはじめ音楽にも興味を持ったりしましたね。あと20年代に興味を持ったことから、日本の昭和初期の女優さんにハマったりして。それから着物も好きですね。日本のものって、どこかしら馴染みがある感覚があったり、アバンギャルドでもあって、素敵だなぁと感じます。
あとちょうどその頃、資生堂のCMを集めたDVDを見て、60年代後半頃のモデルでティナ・ラッツとバニー・ラッツの姉妹や、70年代初期の立川ユリさんにも憧れたんですが、中でも一番衝撃を受けたのは山口小夜子さんですね。写真集やエッセイも買ったほど、ほんとに大好きなんです。
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山口小夜子さんをはじめ、その当時のモデルに惹かれたのはどんなところですか?
その当時のファッションモデルではグレイス・ジョーンズや、山口小夜子さんと同時期にランウェイに出ていたイマンをはじめとするモデルなどなど、いろんな人から影響を受けています。
彼女たちの昔のショーの映像をよく見ていたんですが、演出だったり、そのステージに向かうモデルの挑み方が今とは違って、何かを演じているようなランウェイの歩き方だったり、表情、手の動かし方が印象的なんです。今のショーって、スーっとした感じが求められるので、何かを表現するというよりは服をキレイに見せることが大事になってます。そういうランウェイも素敵なんですが、モデル自身がその服に合うようになりきって、楽しんでいるようなファッションショーに惹かれます。
<イシヅカユウさんプロフィール>
ファッションショー・スチール・ムービーなど、さまざまなジャンルで個性的な顔立ちと身のこなしを武器に活動。2021年文月悠光の詩を原案とした短編映画『片袖の魚』でスクリーンデビューを果たす。
後編では、ファッションモデルとして、役者として、それぞれのこだわりやメイクについて伺いました。
衣装:ワンピース、トップス、レギンス全てTAN(タン)〈contact@tanteam.jp〉、シューズ/FAKUI(ファクイ)〈http://fakui.jp〉
編集/㈱メディアム 成田恵子、執筆/北村 文、撮影/鈴川洋平、ヘアメイク/鶴永チヒロ、スタイリング/藤井希恵
協力/板橋区立 熱帯環境植物館
EDITOR
DEPACO編集部
副編集長 秀島
プロモーション歴10年以上、DEPACOの生みの親。ビューティ系企画~編集~広告~イベントまで幅広く携わる。経験とはうらはらに、百貨店入社をきっかけにデパコスに触れ始めた“保守派”でかつ、"自信はないけど少しはこだわりたい派"。趣味はアート&銭湯めぐり。
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“十人十色の美衣食住”。
ひとそれぞれ、さまざまな「美」を大切にされている方々に迫ります。
今回のゲストはファッションショー、スチール、ムービーなど、トランスジェンダーモデルとしてさまざまな分野で個性的に活動。2021年には短編映画『片袖の魚』に主演し、俳優としても幅を広げているイシヅカユウさんです。