

【小林涼子さん/女優・実業家】農業と表現を行き来する小林さんの「循環する生き方」とは?〈十人十色の美衣食住【後編】〉

08
農業は通常の農園だけでなく「アクアポニックス(水産養殖と水耕栽培を組み合わせた循環型農業)」にも取り組まれているとのこと。「アクアポニックス」と出合ったきっかけを教えてください。
新潟で農業に関わるようになり、いざ起業しようと思った時に、まず考えたのは「東京で農業をやろう」ということでした。当時はコロナ禍で、新潟へ移住するのは現実的ではありませんでした。
そこで東京でできることを考え始めたんです。まずは農地を探したんですが、当然ながら東京にはなかなか農地がありません。それだけじゃなく、都市部にはなかなか土もない、水もない、風もない。農業をする環境としては、ないものばかりでした。でも、ないものを探していても仕方がないので、東京にあるものに目を向けたんです。
そうしたら、ビルがあって、人がいて、飲食店がある。そこに可能性があるんじゃないかと思いました。そんな時に、桜新町のOGAWA COFFEE LABORATORYさんと出合い、「屋上を使ってみない?」と声をかけていただいたんです。最初は「屋上!?」と思いました。でも、せっかくいただいた機会だったので、ここで何ができるか考えてみようと思いました。
OGAWA COFFEE LABORATORYはとてもおしゃれなカフェでご飯もおいしい。だったら、そこで使いたくなるようなものを作れないだろうか。そんなことを考えながら情報を集めていた時に、海外の友人が「今こんなのが面白いよ」とアクアポニックスの事例を送ってきてくれたんです。
正直、最初はあまり日本語の情報がなく何だかよく分かりませんでした。でも調べてみるとすごく面白そうで、英語の文献を必死で読みながら調べたんですが、当時の日本では設備や機材もほとんど流通していませんでした。
それなら自分で作ろうと思ったんです。
コロナ禍で時間もあったので、ホームセンターで塩ビパイプ買い、切ったりしながら試作を始めました。完成したものを自宅のベランダに置いたら、狭いスペースだったのでベランダに出られなくなってしまって(笑)。部屋の中から水槽と植物を眺める生活になりました。
そこに熱帯魚を入れて、使いそびれて芽が出た玉ねぎやリーフレタスを植えてみたり、遊び半分で始めたんですが、意外とちゃんと育つんです。魚を増やしたり、水の流れを変えたりしながら試行錯誤を続けるうちに、私にとってそこは小さな地球のような存在になっていきました。
魚がいて、植物が育ち、生態系が生まれる。その様子を見ていると、とても癒やされましたし、農業には単なる生産以上の価値があることに気づいたんです。都市部で農業をするなら、生産量では新潟には勝てません。でも、人を元気にしたり、楽しませたり、心と体の両方を満たしたりすることはできるかもしれない。そう考えたことが、今の都市型農園の原点になっています。
当時、日本でもアクアポニックスに取り組む会社はありましたが、私がやりたかったのは単なる生産施設ではありませんでした。人が見て楽しい場所、人が集まる場所を作りたかったんです。イメージとしては養殖場ではなく水族館。さらに植物園でもあり、見るだけでなくそこで育ったものを食べることで人も参加できる。そんな場所を目指しました。
だから私たちが作っているのは、一般的な農園とは少し違うかもしれません。農業でありながら、人と自然が出会う場をデザインする取り組みなんです。
09
「アクアポニックス」とはどのような仕組みなのでしょうか?
「アクアポニックス」では、魚の養殖を行い、その水を循環させて植物を育てます。魚は淡水魚でなければいけません。海水魚だと塩分が含まれるため、植物の種類が限られてしまい希望の農産物を育てることができないんです。最初は熱帯魚で試していたんですが、水温管理が難しかったこともあって、現在は日本の気候に適した食べられる魚を育てています。
私は農業が好きですし、生産に関わる事業でありたいと思っていたので、魚も植物も鑑賞用ではなく「食べられるもの」を選びました。育てているのはハーブ類や食用花、葉物野菜などです。階下のレストランのシェフとも相談しながら、「どんなものがあったら使いたいですか」「これはどうですか」と試作を重ね、一緒に品種を選んでいきました。収穫した魚や野菜は実際にレストランのメニューにも使われています。
仕組みとしては、魚の養殖排水に含まれる排泄物や残餌を微生物が植物の栄養素へと分解し、植物はそれを養分として吸収しながら成長。そして、植物によって浄化された水が再び魚の水槽へ戻ることで、水と養分を循環させる持続可能な栽培システムとなっています。
アクアポニックスは、魚・植物・微生物が互いに支え合い自然界の循環を小さな生態系の中で再現しています。もちろん、魚の産卵や大雨などによって水質管理が必要になることもありますが、基本的には水を循環させながら魚と植物の両方を育てています。
農園自体は決して大きくありませんが、多いときは月に3000輪の食用花を生産できるんです。
10
高輪ゲートウェイの「AGRIKO×MIMURE BOTANICAL Lab」では、どのような取り組みをされていますか?
私たちAGRIKOひとつ目の農園開園当初から大切にしているのは、「ビル産ビル消」です。ビルで生産したものをビルで消費する。そして、生産と消費の距離をできるだけ近づけることを目指しています。
一般的な都市型農業というと、屋内の植物工場や養殖施設をイメージする方が多いと思います。でも私が作りたかったのは、そうした生産メインの施設ではなく、人が集まり、学び、食べ、遊べるコミュニティファームでした。
その原点には、新潟で感じた癒やしがあります。私にとって新潟は「心の里山」のような存在なんです。だから都会の中にも、ふと立ち寄れて四季の自然を感じられる場所を作りたいと思いました。子どもは遊びながら学び、大人もほっと一息つける。そんな、みなさんにとっての「里山」のように居心地のよい場所を目指しています。
施設では、水槽から循環した水が植物を通り、再び魚のもとへ戻る「アクアポニックス」の仕組みを活用しています。水の流れる音や植物の緑を感じながら過ごせるよう設計していて、目を閉じると山や川を思い出せるような空間づくりを意識しています。
また、植物はあえて目線より高い位置にも配置しています。東京では見上げるほどの木々や緑に囲まれる機会はそれほど多くありません。だからこそ、自然の中にいるような感覚を少しでも味わってほしいと思っています。
施設名が「ゲートウェイ」であることもあり、都市と農村をつなぐ入口のような場所にしたいという想いもあります。魚に餌をあげたり、植物を育てたり、収穫したものを味わったりする体験を通じて、自然との距離を少しでも近づけるきっかけをつくりたいと考えています。
また全国各地の生産者さんと連携して、さまざまな地域の農産物を紹介するイベントも定期的に開催していて、地域の生産物の収穫体験をしたり、館内のシェフ達が調理してくれたりと、生産から食までを一貫して体験できる場づくりも行っています。
当たり前だと思っていることの向こう側には、まだ知らない発見や出会いがある…。そんなことを届けられる場所であり続けたいですね。
11
小林さんがスキンケアやメイクでこだわっていることを教えてください。
農業は、とにかく日光を浴びる時間が長いので、日焼け止めはこだわって選んでいますね。
紫外線の影響で髪も傷みやすいので、ヘアケアも気をつけています。作業をしていると汗をかくことも多くて、頭皮や髪を清潔に保つようにしています。整髪料がついたままベタつく状態が苦手なので、とにかくシャンプーしてリセットするようにしています。なので、髪は長くても今ぐらいの長さがちょうどいいですね。手入れもしやすいので、自分でも気に入っています。
メイクについては、基本的にはナチュラルなメイクです。なかでもこだわっているのはリップですね。アイメイクももちろん大事だと思いますが、口元がその人の印象を左右する気がしていて。マスクをしていた時期って、表情が伝わりにくいと感じこともありました。だからこそ、目元を強調するよりも、血色感のあるリップで顔全体を明るく見せることを意識しています。
以前はマスカラが好きでアイメイクに力を入れていた時期もありましたが、今はリップと眉毛を整えることの方が大切ですね。ベージュにオレンジやピンクを少し混ぜたような、顔色が明るく見えるカラーを選ぶことが多いです。
12
それ以外で美容のために心がけていることや習慣はありますか?
美容のために一番意識しているのは、水分をしっかり摂ることです。
3年ぐらい前から周囲に「もっと水を飲んだほうがいい」と言われていたんですが、仕事に集中するとつい忘れてしまっていて。でもラジオの仕事を始めてから、声のコンディションを保つためにも水分補給の大切さを実感するようになりました。今では1日に2~3リットルほどを目安に飲むようにしています。
会社にもウォーターサーバーだけでなく、お茶やフルーツティーなどさまざまな飲み物を用意していて、自然と水分が摂れる環境を作っています。美容のためというより、まずは体調やコンディションを整えるためですが、結果的に肌の調子も安定しやすくなった気がします。
あとは、手や爪のケアも大切にしています。農業では土に触れる機会が多いので、どうしても手が荒れやすいんです。会社の代表として名刺を渡したりする機会もあるので、ネイルチップをつけたり、手元の印象には気を配るようにしています。
ハンドクリームを洗面所やトイレにも置いて、こまめに、たっぷり塗るようにしていますし、コスメカウンターに行ってネイルを見るのが好きで、ネイルトリートメントも買うことが多いです。
ネイルは、ついついベージュ系を選んでしまうんですが、季節に応じて肌の色も変わるので、その時の肌の色に合うベージュ系を選んでいます。ナチュラルな色味はどんなシーンにもなじみやすくて使いやすいですね。
会社の仕事では資料を指し示したり、人前で手を使う場面も多くて、手元は意外と人の目に入りやすい部分です。と同時に自分自身の目もよく行く部位でもあります。だからこそ手元が荒れていると、今の自分がイケてないと感じてしまうので、忙しい時こそハンドクリームでしっかり保湿して、ベージュのネイルを整えておく。そうすることで、ちゃんとした自分でいられるような気がしています。
13
愛用しているアイテムを教えてください。
最近の愛用品は、〈Hydro Flask〉の大きなウォーターボトルです。もともと水を持ち歩く習慣があまりなかったんですが、母がニューヨークへ行った時に「あなたにぴったりだと思って」と買ってきてくれたんです。
初めて見た時は、その大きさにびっくりしました。1リットル以上入るサイズで、まるでダンベルみたいだったので「さすがに大きすぎるんじゃない?」と思ったんです。でも使い始めてみたら意外と便利で。ラジオの収録中にも何度も水を飲みますし、気づけば毎日持ち歩くようになっていました。今では仕事中も手元に置いていて、すっかり欠かせない存在になっています。
14
今後挑戦してみたいことはありますか?
挑戦してみたいことは、本当にたくさんあります。もともと好奇心が強くて、「やってみたい」と思うことが次々に出てくるタイプなんです。
俳優としては、朝ドラ『虎に翼』に出演した経験が大きな転機になりました。長い時間をかけてひとつの役と向き合うことがとても楽しかったですし、自分自身の人生経験が役と重なる瞬間もあり、これまで歩んできた道が、ちゃんと芝居につながっていたんだと実感できた作品になりました。そういう意味で、会社の代表としての経験を積んだ今の私だから表現できる役にも挑戦したいと思っています。
実は最初、『虎に翼』の役は自分らしくないかもしれないと思っていたんです。でも演じてみると葛藤を抱えながらもしなやかなに生きている女性で、共感できる部分がたくさんありました。それ以来、「自分はこういう役が向いている」と決めつけるのではなく、「私にはどんな役ができると思いますか?」と周囲の声を聞くことが楽しくなったんです。
昨年から今年にかけて環境も変わり、俳優としても新しいスタートを切りました。だからこそ今は、自分で可能性を狭めずに、いただいたご縁や挑戦の機会を大切にしていきたいのです。
30代後半は、世間では中堅と言われがちですが、あえて自分で方向を決めずに目の前にやってきたことに飛び込んでみる時期なのかもしれません。新しい役や新しい経験との出会いを通して、まだ知らない自分に出会える気がしています。その積み重ねが、きっと40代の新しいキャリアにつながっていくんじゃないかなと思っています。
15
小林さんにとって、人には理解されないかもしれない(もしくは理解されなくてもいい)けど自己満足のためだけにやっていらっしゃる趣味や習慣などはありますか?
16
小林さんにとっての「美」とは?ご自身の生活のなかで「美」はどのような存在ですか?
前編では、小林さんが考える「人を元気にする仕事」や、俳優業と農業事業を通して培われた価値観について伺いました。
前編記事を読む >><小林涼子さんプロフィール>
俳優・実業家。4歳から芸能活動を始め、ドラマ・映画・舞台など幅広い分野で活躍。近年はNHK連続テレビ小説『虎に翼』への出演でも注目を集めた。2021年に株式会社AGRIKOを設立し、農業や地域活性化を軸とした事業を展開。都市型農園「AGRIKO FARM」の運営やアート事業をはじめ、多彩な活動を続けている。農業や自然との関わりを通して心と体の豊かさを大切にしながら、俳優、経営者、表現者として新たな挑戦を続けている。
Instagram:@ryoko_kobayashi_ryoko
編集/㈱メディアム 成田 恵子、執筆/北村 文、撮影/Suat Koylu、ヘアメイク/鷲塚 明寿美
今おすすめのデパコス特集もチェック!
EDITOR

DEPACO編集部
エディター 高梨
旅行誌の出版社で編集職を10年以上経験。出産を機にキャリアを見つめ直し、今後は大好きな美容の情報発信をしたいという想いでDEPACO編集部へ。美容はスキンケアやベースメイクでの“土台作り”が好き。趣味は旅と料理。
- ※この記事は、当記事の公開時点のものです。
- ※価格は全て税込です。
- ※写真と実物では、色、素材感が多少異なる場合がございます。
- ※取り扱いの商品には数に限りがございます。
- ※入荷が遅延する場合や急遽販売が中止になる場合がございます。


























“十人十色の美衣食住”
前編記事を読む >>ひとそれぞれ、さまざまな「美」を大切にされている方々に迫ります。
今回のゲストは、俳優として活躍する一方で、農業事業を手がける株式会社AGRIKOの代表としても活動する小林涼子さんです。朝ドラ『虎に翼』への出演をはじめ俳優として活躍しながら、都市型農園や地域との交流を生み出す事業にも取り組むなど、多彩なキャリアを歩んでいます。農業との出合いや起業のきっかけ、俳優業との意外な共通点、日々の美容習慣、そしてこれから挑戦したいことまで。自然体でありながら挑戦を続ける小林さんの魅力に迫りました。